満足度★★
観客の刷り込みに助けられる舞台
たぶん、カーテンコールで、立たずに座っていたのは私一人だったかもしれません。
今日の会場を占めていたと思われる、中川さんファンのほとんどが、嬉しそうにスタンディングして、中川さんがモーツアルトを演じるインディゴバージョンのプレビュー初日に、喝采の声をあげていました。
でも、長年、数々の舞台を観て来た私にとっては、もう三十年以上の山本耕史ファンとして、夢の共演舞台の実現であったにも関わらず、かなり満足度は低い舞台でした。
たぶん、今日の公演に満足していた観客は、ほとんどの方が、あの中川さんんを一躍有名アーチストに飛躍させた、傑作ミュージカル「モーツアルト!」の目撃者ばかりだと思うのです。
もう二度と観られないかもと諦めかけていた中川さんのモーツアルトを再び観られるのですから、ファンなら、その時点で、期待感で胸がいっぱいになる筈です。この舞台、私から見ると、かなり、脚本が底が浅いという印象でした。人物の葛藤描写も通りいっぺんだし、宣伝で謳われているような、モーツアルトとサリエリの二人の芸術家の対峙シーンもなきに等しいものでした。
でも、多くの観客は、あの「モーツアルト!」で見聞した中川ウ゛ォルフガングの痛ましい苦悩を脳内保存しています。
また、「アマデウス」を観た観客は、サリエリの、モーツアルトに対する憧れと嫉妬を知っています。
そういう、ありがたい、観客の刷り込みに助けられて、多くの観客にとっては、満足できる作品になったのではと思いました。