フレネミーがころんだ 公演情報 熱帯「フレネミーがころんだ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    大人のいじめ・フレネミー
    ただのEnemyならまだいいが、FriendのふりをしたFrenemyだから始末が悪い。
    友達のような顔をして平気で傷つけるようなことを言い続け
    傷つく様子を近くで見ながら密かに笑っているのがフレネミーだ。
    大人のいじめと、さらにそれを利用して人間関係を壊して喜ぶフレネミー。
    リアルなキャラと時折刺さる鋭い本音の台詞が上手い。

    ネタバレBOX

    舞台は大きな団地の一角にあるキッチンスタジオ。
    6人の生徒はみんなこの団地の住人で、和洋中のお料理を習いに来る。
    スタジオを切り盛りするベテランスタッフ諏訪冷子(岩崎純子)を中心に
    料理の講師たち、イタリアン(匁山剛志)、中華(アホマイルド クニ)、
    和食(西原誠吾)が日替わりでにぎやかに料理を教えている。

    イマイチ頼りないオーナー(松浦英市)は、
    最近しっかり者の彼女(奥村香里)の言いなりで、それが冷子の気がかりだ。
    そこへ朝霧夏生(澤田育子)という女性が新しく入会、
    洗練された明るい性格だが、他の生徒たちを鋭く観察し
    微妙な人間関係に揺さぶりをかけるような行動に出る。
    それは生徒だけでなく、やがてスタッフの冷子にも及んで来る・・・。

    舞台正面奥にキッチンスタジオ入口のドア、手前には横長のテーブル、
    これは作った料理を試食するためのものらしい。
    上手に生徒用のロッカールームへ続く廊下、下手にはキッチンがあって
    ロールカーテンを上げるとガラス越しにキッチンの一部が見えるようになっている。
    3か所の出入り口がスピーディーな出ハケを演出してテンポ良く進む。

    登場人物のキャラが明確で気持ちが良いのは
    台詞に表情がちゃんとついて行っているから。
    ちょっとずつ強引な人々が、世の中をかき回しながら動かしていて
    事なかれ主義の人々は反発しつつも結局言いなりになってストレスをためる…
    という現代日本の縮図を見るようだ。

    黒川麻衣さんの台詞は、時折とがった本音を言わせていてとても面白い。
    何気ない台詞に客席から笑いが起こるのは、その間の良さだと思う。
    作・演のセンスの良さを感じる。

    冷子役の岩崎純子さん、ちょっと台詞を噛んだ場面もあったが
    緊張感がふっと途切れそうになるのをこらえつつ
    周囲に翻弄されながら頑張っている女性を熱演。

    和食の料理人を演じた西原さん、長く親方の元で修行して来た
    職人らしい言動が板についていて説得力がある。
    簡単嗜好の生徒相手に悩みながら変化して行くところがとても良かった。

    引っかきまわした挙句冷子から退会を促されて去る朝霧夏生を演じた澤田育子さん、
    周囲を観察してターゲットを絞ると近づいてそとささやく。
    「あなたの気持ち、よくわかる」
    去り際でさえ自信たっぷりな表情で
    思わず彼女は前座に過ぎず、真のフレネミーは他にいるのではないかと思ってしまった。

    そう言えばオーナーの彼女は、何のかんの言いながら自分の思い通りに
    キッチンスタジオを運営し始めているし、
    冷子を持ちあげながらも、巧みにコントロールしているように見える。

    話がもう一回転大きく転がっって、フレネミーの思惑通り生徒同士が本音でつぶし合い
    冷子が朝霧夏生と大バトルの末勝利を収めたりしたら
    ”痛快度”はマックスに達したかもしれない。
    唐突な幕切れにあっけなさも感じたが、
    ”これはほんの始まりまだまだフレネミーは続く…”
    と考えれば妙にリアルで納得してしまう。

    人の心を操り混乱する様を見て楽しいと思う心理、
    しかも全く悪びれもせず笑って立ち去る神経。
    おーこわ…。
    あたしもにこにこ甘言フレネミーには気をつけよう。

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    2013/02/09 04:53

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