嘘ツキタチノ唄 公演情報 企画演劇集団ボクラ団義「嘘ツキタチノ唄」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    入れない話。
    結論から言うと、おもしろいかおもしろくないかと問われれば相当におもしろいけれども、僕がボクラ団義に期待している、エンターテイメント性の中から垣間見える強烈なメッセージ性を読み取れませんでした。

    つかみの部分は比較的フツウの演劇的なもの?と思わせておいて、相変わらず中盤から縛っていた糸がスルリと解けてパタパタッとパズルのピースがはまり始め、結末まで突っ走る抜群のスピード感は独特。

    これ紙の本、たとえば小説なんかで読んだら「そんなベタな!」と思ってしまう類の話だと思う。それをパズルのピースがはまっていく快感に泣きの要素を重ねてくるあたりはさすがとしか言いようがない。

    ただし、この作品に関しては、あるキャラクターに序盤から惹き込まれる、巻き込まれるように観客側がある程度視点をコントロールする必要があり、ここでイマイチ加速度に乗れないと、結末まで観たところで
    「うーん…そうね、まあそういうことだよね」
    と冷静かつ安全に下車するはめになってしまう。

    また、ストーリーテラーが多すぎて、(初演と同数であるにもかかわらず)内輪の小競り合いが煩わしく感じる。羽田成田はバッサリ切り捨てるくらい手を入れてもよかったのではないか。

    余談だが、ボクラ団義の公演には過去に客演した役者さんたちがたくさん訪れていて、終演後に気づくと上原マリカ、鷹野百合(綿美)、佐知川幸子、水月沙矢、スーちゃん等ものすごい豪華メンバーに囲まれているというような非日常不思議体験がかなり高い確率で起こる。
    彼女らと良好な関係を保てているということは、つまり今後にも期待できると考えてしまうのは短絡的すぎるだろうか。

    (敬称略)

    追記:22日に行われた「鏡に映らない女 記憶に残らない男」の生コメンタリーイベントはすばらしかった。★7つ。
    サイコモンスター水月沙矢は、いつまでも僕の中で生き続けるだろう。

    ネタバレBOX

    僕がこの物語にいまいち入り込めなかったのは、結局のところ「必要のない嘘をつくタイプ」の神谷雪子というキャラクターにシンパシーを感じにくい、という点に尽きると思う。

    まず前提として神谷雪子に無条件で相当な魅力を感じないと、なぜ周辺の人たちから強烈に愛され、ときに同じくらい強烈に憎まれたのかが入ってこないうちに物語が進展して収束に向かってしまう。
    なぜ事件が起きたのか(ある意味意図的に)ワンサイドな視点、また、なぜ周辺の人々が力を会わせて解決へ向かって物語を動かしていくのかという心の動きが見えてこない。

    ついでに神谷雪子に惹き込まれないまま進んでいくと、いまいちキャラクター的な背景が語られないまま、逃走した大柳を刺すという、神谷真知子(雪子の母)の行為がいささか唐突に感じられる。

    なぜここまで高水準のものを期待して厳しい評価をするのかといえば、それは過去に神懸かり的に高い水準の作品を連続で上演した団体だから。今年もハイペースで公演の予定があるようなので新作に期待。

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    2013/01/26 02:47

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