世界を終えるための、会議 公演情報 タカハ劇団「世界を終えるための、会議」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    美しい選択
    この世界を表わすかのような混沌として美しいフライヤーの色。
    「5人を助けるために1人を殺すか」という問いかけが
    “選択出来ない人間”と“解答を与えるシステム”の間を駆け巡る。
    この質問、同時に私の正義も問われている。

    ネタバレBOX

    劇場に足を踏み入れると、客席が舞台を挟んで奥と手前の二か所に分かれていた。
    舞台上に敷かれた敷物の上を歩いて奥の席に座る。
    舞台は白一色、正方形の白いボックスが不規則に並べられている。
    そこで客入れの途中から役者がオセロゲームを始め、それを覗きこむ人が集まってくる。

    12人の登場人物は、暇つぶしをしているのであった。
    彼らは人間ではない。
    いわば“検索システム”だが、人間が求めている答えはただひとつだ。
    システムは質問してくる人間に正しい解答を出す、それも即座に。
    今や人間は、彼女に真実を打ち明けるべきかどうか、サプライズに何を贈るべきか、
    果てはこの結婚が正しいかどうか等々、全ての選択を検索に頼って暮らしている。
    全盛期は超忙しかった“システムたち”だが、
    新バージョンにとって代わられて今はド暇になってしまった。
    そんな彼らに「新バージョンを消去せよ」というミッションが下る。
    自分達旧バージョンの方が優秀だという結果になったからではないかと沸き立つが、
    では新バージョンと自分達はどこが違うのかと考え始める。
    例えば「5人を助けるために1人を殺すか」という問いに対し
    迷わず「Yes!」と答える旧バージョンに対し、新バージョンは・・・?

    マイケル・サンデルの「白熱教室」みたいだと思ったら
    当日パンフの「参考文献」にちゃんと書かれていた。
    意表をつく設定と“哲学する”展開が新鮮で面白い。
    システムたちの考える人間の不可解さ。
    迷い、逡巡し、痛みを伴う決断には時間をかけたがり、
    時に誰かを助けるためなら自分を犠牲にすることを“美しい”とする人間。
    選択を迷うのはいつも誰か別の人間との関わりが絡むからだ。
    合理性の対極にあるそれら非効率的な感情の揺れ、まさにその人間らしさが浮き彫りになる。

    高羽彩さんの台詞は、“美しい選択”の概念を持たないシステムたちに
    丁寧に質問を重ねて行く。
    少し時間をかけ過ぎかとも思ったが、そこで客が置いて行かれると途切れてしまうから
    哲学するならあのくらいが良いのかもしれないと思い直した。

    ちょっとショックなオチがなかなか良く出来ているのでその先が知りたくなる。
    彼の意図するところ、これからのこと、そしてあのセーラー服の彼女。
    年齢不詳、小柄な少女の存在感の大きさがあまりに素敵なので
    この後の彼女の行動を追ってみたくなる。
    より人間らしさに近づくシステムとはどんなものか。
    一緒に悩むのか、複数の解答を用意するのか、それとも沈黙するのか・・・。

    前半をコンパクトにして、この先を見せて欲しいと思うのはわがままかしら。
    システムが考える“人間らしさに呼応する解答”の行きつく先には
    たぶん私たち人間の未来があるはずだ。
    なにひとつ選択できずに、いちいち質問しては結論を他人にゆだねる
    それはつまり責任を回避することで、そんな人類はどこへ行くのか。
    浮き彫りになった人間らしさが、新システムでかたちになったら
    新旧バージョンの解答が比較出来てエンタメとしてもっと面白くなりそう。
    イマドキ感ありまくり、でも思わず考えさせられる舞台だった。

    さて私は、5人を助けるために1人を殺すか、
    あるいは自分を犠牲にするか──?
    どれも選択せずに逃げ出したいんですけど。

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    2013/01/24 10:11

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