満足度★★★
小林十市さんが圧巻
ベジャール作品のトリプルビルで、それぞれにベジャールならではの独創性が感じられて、楽しめました。
『ドン・ジョバンニ』
女性ダンサーだけによる作品で、ドン・ジョバンニは登場せずに照明や椅子を用いて象徴的に表現していていました。その周りでジョバンニに対してコケティッシュにアピールする女性達の姿が可愛らしくも滑稽でした。
最後に冴えない感じの裏方スタッフの男性が舞台を横切るという皮肉や、音楽のショパン繋がりでシルフィードが登場するというユーモアが楽しかったです。
『中国の不思議な役人』
色気仕掛けで追剥をする女と、何度殺しても死なない中国の男のやりとりを描いた、退廃的で官悩的な作品でした。女役を男性ダンサーが演じていて、倒錯的な雰囲気が魅力的でした。
中国の役人を演じた小林十市さんが、ゾンビのような不気味さと、その中にある純真な感情を的確に表現して踊っていて素晴らしかったです。ジャケット姿の男性群舞や、黒の下着姿の女性群舞も迫力があり格好良かったです。
『火の鳥』
原作とは全く設定を変えて、青い作業着に身を包んだパルチザンのグループの劣勢から希望への物語を描いた作品で、終盤へ向けての高揚感が素晴らしかったです。
パルチザンのリーダーである火の鳥を踊った木村和夫さんは少々厳しそうな所もありましたが、演劇的表現力があり、苦しそうな姿が作品のテーマに合っていたと思います。