満足度★★★★★
鳴り止まない拍手。
劇場は、、、いや、劇場ではない。ただの何もおかれていないオフィスといっても過言ではない、ただの狭いスペースに照明4つ置かれている。立ち見も含めて50人ほどがぎゅうぎゅうになって入っていたのではないだろうか。客入れの時から、犬の耳がついた帽子をかぶった白塗りの顔に目元には涙の化粧を施した人間が客を迎え入れている。この日の一人芝居を担当する高橋倫平。主宰の末原拓馬と気さくに客を迎え入れている。まだ数えるほどしかおぼんろの演劇を見てはいないが、これが客入れのスタイルなのだろうか?とても好感が持てる。
部屋が暗くなり、芝居が始まるとあっという間に、さっきまでオフィスまがいの部屋があっという間に、別世界になってしまった。
老犬、狂犬の捨て犬ポチが物語りを紡ぐ。
高橋倫平のあまりの体のキレに目を疑う。
アクションからのタイトルコール「捨て犬の報酬」の幕が天井から落ちてきた時に思わず、背筋が震えた。
そこからはもう、目が釘づけ。
一挙一動が見事に画になる。
悲しい寂しい老いさらばえた狂犬が、最後にもらったプレゼント。
そして、最後の遠吠え。そして、暗闇でぽつりと言われる最後の台詞。
客席はすすり泣きではなく号泣する客までいた。
演劇を見始めて、こんな事が起こっているのははじめての事だった。
かく言う私も、涙をこらえきれずにいった。
たった30分の芝居のはずなのに、
2時間3時間の芝居を観るよりも満足できるのは何故だ?
末原拓馬の脚本の素晴らしさもあるだろう。
そして、何よりも高橋倫平という無名の役者の凄さか。
カーテンコールでは拍手が鳴り止まず、当の本人も戸惑っていたのが少し笑えたが、その拍手こそが、その芝居の評価であることは間違いない。
劇団おぼんろ、私の中でこれから追うべき価値のある劇団に決まった。