東京ノート 公演情報 東京デスロック「東京ノート」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    TOKYOが際立つ演出
    私が「東京ノート」の舞台を観るのはこれが3回目だが
    これほど「東京」を意識して観たのは、このデスロック版が初めてだと思う。
    そして更地(?)になったアゴラ劇場を見たのも初めてであった。
    デスロック4年ぶりの東京公演は、「ここ東京で」演じ、観ることを強く意識させる舞台だった。

    ネタバレBOX

    貴重品以外の荷物を預け、靴を脱いで劇場への階段を上がる。
    なんで靴脱ぐの?と思いながら劇場へ入った途端「へー!」と声を上げてしまった。
    真っ白なふわふわ毛足の長いじゅうたんが敷き詰められ
    ベンチにはもう座る余地がなくて、大勢の人が絨毯の上に思い思いの格好で座っている。
    どこで芝居するのかなと思うほど、特に空いているスペースもない。
    やがて役者さんが観客の中に混じっているのに気づく。
    ミラーボールが下がり、大きなスクリーンや鏡が私たちを見下ろすように設置されている。

    オープニング、ひとりの役者さんが立ち上がって出身地について語り始める。
    次々と役者が立ち上がり、出身地とそこでの思い出などを語る。
    同時多発的に発信される出身地情報は、「場所」だけははっきり聴きとれるように
    あとは尻つぼみに声が小さくなり、やがて途切れ、また続きが始まったりする。
    客の間を、敢えて狭いところを選ぶように縫って移動しながら…。
    やがてスクリーンに映し出された2013年の文字が近未来に変わる。

    演出の多田淳之介さんが登場して
    「どうぞ好きな所へ自由に移動しながら観てください」と言った。
    そして、ヨーロッパで戦争が起こり貴重な絵画が東京に避難して来ているという
    その美術館で、日本人の日常が語られ始めた・・・。

    地球のどこかで大きな戦争が起こっている時に
    東京の美術館では、めったに見られない絵画を鑑賞しつつ兄弟が再会しようという
    平和でのどかな集まりが計画されたりしている。
    絵画好きな長女(松田弘子)を中心に久しぶりの再会を喜び合いながら
    実は親の介護、夫の浮気など様々な問題を抱えた人々が集う。

    東京デスロック主宰の多田淳之介さんは、この4年間東京公演を休み、
    埼玉県富士見市の市民文化会館「キラリ☆ふじみ」の芸術監督として活動し
    同時に東京以外の場所とネットワークを育んできた。
    この間彼がやってきた“さして芝居に関心のない人々を劇場に呼ぶ”ということ
    そのための様々な試みが集約されているような東京復帰公演だった。
    興味を惹かれ、驚き、参加することで、演じる側と観る側が一体となる空間。
    「なんだろうねぇ?」「これ、どうなるんでしょう?」という暗黙の
    客同士のゆるいコミュニケーションから始まって
    途中見えにくいからと移動したり、足が疲れて投げ出したり自由な感じが新鮮。

    ただね、ちょっと疲れました・・・。
    居酒屋だって掘りごたつ形式が主流でしょ。
    床に座った位置から役者さんの表情を見上げる、高い所のスクリーンの文字を見る、
    その動作に首が疲れて途中下向きたくなるし、
    やっぱり椅子に慣れた生活していると、アフタートークも含めて2時間強
    床に座る姿勢がちと辛いかな。
    背もたれのないちっちゃいスツールでもいいからあったら嬉しいと思った。
    でもあの自由度の高さと白いじゅうたんの触り心地は最高で、横になりたかったくらい。

    青年団の松田弘子さんは、前回上野の美術館での公演に引き続き長女役で
    安定感と同時に“市井の暮らし”を感じさせてとても好き。
    この人の日常感が、戦争している世界とのギャップを際立たせる。

    多田さんはこの4年間“大きくなりすぎた地方都市”としての東京を見て来たのだろう。
    デスロックの東京での活動は、劇場を一度更地にするところから始まった。
    名作と言われる作品でも、余白では気負いなくこれをやっちゃうところが素敵。
    多田さん、ふじみもいいけどこれからまた東京も楽しみが増えました。

    0

    2013/01/13 15:29

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大