東京ノート 公演情報 東京デスロック「東京ノート」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    見ておいていい作品
    舞台、その有り様自体が異色の芝居でありました。
    驚いたという以上に、僕は愉快でしたね。こういうやり方もあるんだなと。
    評価の分かれる演出でしょうが、僕は支持したいと思います。
    (ちなみに、当日券は余裕があるそうです)

    ネタバレBOX

    靴を脱いで入場すると、そこは奇妙な空間。
    真っ白な毛足の長い絨毯、中央にベンチが三つ、壁は黒をベースに所々に白い四角の模様。
    三方の壁には、三つの大きさの異なるスクリーンとモニター、二つの大きな鏡。
    天井にはミラーボール。
    背後には、モダンアートのオブジェ、美術関連のパンフレットが置かれた棚、屑籠。
    客は好きな場所に座っていいという。ここで芝居・・?
    見回していると、客に混じって役者がいるのに気がつきました。なにが始まるのか?
    場内が暗くなり、スクリーンとモニターに英語で様々なメッセージが流れ始めます。Where are you from ? 音楽が止み、役者たちが立ち上がると、自分の出身地や上京した経緯を語りながら彷徨います。
    これは戯曲にはないプロローグです。本編でも同様に、役者たちは客の合間をぬって移動し、ベンチに座ったりしながら演技をすることになります。
    プロローグの終りに、演出家が登場して、上演中も好きな場所に移動して構わないと言う。ホントに大丈夫?
    結論を言うと混乱はありませんでした。戸惑っていた僕も段々と高揚してきて何回か移動してみました。面白かった。慣れないことをしてかなり疲れましたが。

    このやり方で2時間以上は無理もあった。ツキアイキレナイ客もいて当然でしょうね。
    けれども、この戯曲にカットできる余地はなかったでしょう。
    さすが平田オリザの代表作ですね。ただの通行人と思えた人たちが過去に繋がりがあり、たまたま束の間の再会を果たすという`偶然`を描きながら、一箇所として展開に必然性を欠いた、あやふやなこじつけは見えない。初演当時の日本と東欧、バルカン半島から中東まで、歴史的状況を取り入れた作劇が古びた印象を与えないのも大したものです。

    多田淳之介の演出のテーマは、客を見られる存在にも成すということにあったと思います。この4年余り地方との関わりから生まれた観客が参加する演劇への興味の発展、地域・東京での活動のテーゼであるのでしょう。
    そのスタートダッシュにこの大胆さで臨んだ度胸と志を、僕は買いたい。

    多田はあえて奇を衒てらう演出を試みましたが、作品の大事な本質は表現出来ていた点も評価しておきたいと思います。
    例えば、最終シーンの泣いたら負けの「逆にらめっこ」です。
    役者も好演しましたが、暗転のあと、年代が進んで 9999 そして 0000 になる映像と美しいピアノの旋律が胸を衝きました。
    平凡な人間の、けれども切実を極める心の痛み。それでも、ひとは生き続ける・・。
    演劇理論や批評性から語られることの多い平田オリザ作品の詩情をよく描けていたと思います。

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    2013/01/13 02:45

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