満足度★★★★
面白い試みとは思うものの
私は、正直、桑原さん脚本のあつい編の方が断然好みでした。
主役のお二人には、それ程興味はなかったのですが、桑原脚本と、井之上、山本、西山、桑原の出演陣に惹かれて、行ってまいりました。
あつい編は、やや起伏が乏しく、ダラダラと長く感じる部分はあるものの、人物の造形に説得力がありました。前にも青山さんの演出舞台は数回観ていますが、青山さんの演出は、緩急がなく、冗長に感じることが多いので、このあつい編も、桑原さんが演出されていたら、もっとメリハリの効いた舞台になっていたように思います。だいたい、主役の方が、演出まですると、舞台は散漫になるものだと思います。
一方、後半の中島さんの作・演出になる、苦しい編は、私には、思いつきだけの、仏作って魂入れずの脚本に感じられました。あまりにも、人物造形がその場凌ぎで、腹が立つ程でした。
せっかく、あつい編で、桑原さんが丁寧に、登場人物のキャラクターを確立したのに、中島さんの苦しい編が、根底から、滅茶苦茶に解体してしまった感じがしました。
ただ、面白いことに、この苦しい編の方が、各役者の見せ場はふんだんにありました。各人の技量が試されたのは、むしろ、苦しい編の方です。
ですから、ストーリー展開の不備には目を瞑り、役者の度量比べ、役者の品評会的な芝居という観点から見れば、この舞台は、かなり面白い試みだと思えました。
苦しい編の役者、桑原さんの演技力が、あまりにも抜きん出ていて、また、桑原さんへの執着心が増してしまいました。
勘三郎さんの晩年の舞台にお付き合いの多かった井之上さんの名演を拝見し、もし勘三郎さんがこの舞台をご覧になっていたら、腕組みして、目を細めながら、「井之上さんて、いい演技するんだよなあ!」と呟いていらしただろうと思い、涙が零れました。
2012/12/16 13:29
観る前に、ざっとくれないさんのコメントを拝見していたので、自分の感性が真逆で、ビックリし、帰って、もう一度、くれないさんはどちらを褒めていらしたっけ?と再確認してしまいました。(笑)
十人十色、感想は、人それぞれの好例でしょうか?面白いですね。