満足度★★★★★
燐光群の社会性
「宇宙みそ汁」は清中 愛子氏の自家製手作り詩集「宮の前キャンプからの報告」、その前後の作品、拾遺と手記、坂手氏へのメール等を坂手氏が演出家として構成した作品である。基本的にはポエティックラングで書かれているテキストを複数の役者が、同時に発声し、詩行に合った所作を織り交ぜながら進行してゆく。そのややアップテンポなリズム感と微妙なハーモニーが美しい。
「無秩序な水のコメディー」は、フランスで催されたフェスティバル、括りのキャッチフレーズとして用いられたようである。ただ、フランスでコメディと言う時、喜劇ばかりを指す訳ではないことも知っておいて損は無い。トラジェディーに対しては確かに日本で言う喜劇に近いが、コメディーということばは、演劇総てを指すことばとしても用いられる。別の言い方をすれば、悲劇は、悲劇の当事者によって書かれるのではなく、その周辺に居る者によって書かれ、喜劇は、悲劇の当事者が生き延びる為に自らを嗤いの種として書く傾向はあるかも知れない。
何れにしろ、「入り海のクジラ」「じらいくじら」は共に海を汚染した二本足の、生態系への誤魔化しようの無い深刻な犯罪と、それだけの罪を犯しながら更なる愚行に走る二本足の「知恵」を告発して止まない。「利き水」も人災3.12を静かに、然し鋭く告発する優れた短編である。