『ガラクタとペガスス』 公演情報 8割世界【19日20日、愛媛公演!!】「『ガラクタとペガスス』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    「家族」をつなぐ「モノ」がたり
    アットホームなコメディだけど、少し気負いすぎたかな。

    ネタバレBOX

    今や妹1人しか住んでいない実家。
    その妹も引っ越しをすることになり、家の整理をするために、久しぶりに集まった兄弟と従弟たち。

    両親の思い出の詰まった、星座早見表、招き猫、鳩時計をどうするか揉めている兄弟。
    その当の本人たち(星座早見表、招き猫、鳩時計)が、捨てる前にお願いを聞いてほしいと言い出す。

    百鬼夜行ではないけれど、モノに生命が宿り、いろいろ語り出すという趣向は面白い。
    正確には、生命が宿って語り出すのではなく、モノの声が聞こえるようになる、ということなのだが。

    登場人物全員の暖かい気持ちが伝わってくる。古いモノを持って帰ることに反対していた長男の嫁も、実は……ということがわかってくる。

    アットホームなコメディ。

    ただし、その見せ方は、勢いで見せようとしすぎたのではないだろうか。
    つかみの雰囲気は、多少のテンションがあるのはいいのだが、3つのモノもそれぞれがすべてテンションが異常に高く、見ていて疲れてしまう。
    もろちん、テンションの高いところとそうでもないところは、はっきりと分かれているのだが、とにかくテンションが高いところのレベルが高すぎるのと、テンションの高いのを、テンションの高いのが受けてしまっていること、さらにその部分が長く持続するので、全体的に無闇にハイテンションとなっているように感じてしまうのだ。

    8割世界は全編ハイテンションではないものの、明るく元気な劇団だと思う。
    しかし、その元気の良さ、明るさは、物語の盛り上がりに寄り添いながら、あるいはキャラクターの明るさが際立つように使われていた。
    しかし、今回はなんとなく気負いが先立ちすぎているように感じた。

    例えば、3つのモノでいえば、それぞれが方向性の違うキャラづけをされているにもかかわらず、テンションの高さで同じように見えてしまう。
    何十年も家にあり、兄弟たちよりも年齢の高いモノたちなので、老人、と言わないまでも、もっと落ち着いていてもよかったのではないだろうか。
    落ち着いた口調で兄弟たちが振り回されるという図式だ。そして、「ここぞ」というときには声を張る、でよかったように思える。

    つまり、モノと兄弟たちが同じようにハイテンションなので、そういう意味においてはメリハリに乏しいと思う。

    明のファンの女性たちも、両者とも同じようにハイテンションで、舞台の上が賑やかになる、を通り越してしまっている。彼女たちをそうするならば、テンションを下げて、バランスを取る登場人物や、シーンが用意されていないと、可哀想。

    また、そういうテンションに全体があるので、長男の妻が、キレて怒鳴るシーンが生きてこないように思える。

    朝から片付けでバタバタして、少し疲れ気味の兄弟たちが、古びたモノたちに振り回される、という、普通と言えば、普通の演技で進めていたとしても、コメディとしての演出のうまさと、役者が揃っているのだから大丈夫だったと思う。

    長男夫婦のこと、弟の仕事のこと、妹と幼なじみの恋の行方のこと、などや、兄弟たちの過去の思い出、両親の思い出などが、「モノ」たちによって、うまく盛り込まれているのだから、そういう物語を大切に演出していけば、「家族」がテーマとなった、さらに味わいの深い作品になったのではないだろうか。

    「モノ」は実際に声を出さなくても、「家族」の歴史を語るものである。それが「実際に語り出す」ことで、テーマがくっきりとしているのだから。

    例えば、星座早見表が話す、ペガススのことなんか、とてもいいのだから。そこに向けての道程は、もう少し丁寧にしていってもよかったということなのだ。

    「元気」な8割世界という特徴づけというか、差別化、というか、「こうありたい」が先に出すぎたのかもしれないけど。

    ラストは、ちょっとホロっとさせた。こういうのをベタと言うのかもしれないが、それでもいいものはいい。
    そして、ラストのあとの「オチ」はさらに「家族」というキーワードを絡めて、笑いつつ、いい締めであったと思う。

    兄弟たちは、実家を片付けに来ているということなので(ほぼ片付いたという設定ではあるが)、軍手をしているとか、頭にタオル巻いているとか、ほうきがあったりとか、そういう細かい設定もほしかったところだ。

    役者は、2人の兄弟(佐倉一芯さん、白川哲次さん)がいい味。妹役の日高ゆいさんも良かった。星座早見表の小早島モルさんは、何をやってもいい役っほいのでズルイけど面白い。嫌みにならないところがこの人の持ち味かも。

    客入れのときに、鈴木雄太さんと小林肇さんが舞台の上から挨拶し、客を誘導するというのは、なかなかのアイデアではないかと思う。

    今回、小林肇さんが芸名を付けるということで、アンケートに欄が設けてあった。どんな芸名になるのか楽しみだ。いい芸名を書いたので採用される・・・わけないか(笑)。

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    2012/12/06 05:03

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