満足度★★★★★
待ちに待った「菅原伝授手習鑑」
今年の頭から所属劇団員の外部公演を見始め、4月末のPLAY PARKで「海神別荘」、5月の花組HON-YOMI芝居「天守物語」を拝見して、ようやく辿り着いた「菅原伝授手習鑑」。
劇団創立25周年記念作品ということもあって、ロビーへ入った瞬間から役者の屋号が入った贔屓からの提灯が目に飛び込んできて、雰囲気はまさにお祭り。
客席へ踏み込むと、今度は舞台の上部と左右にも灯った提灯が。舞台上も、上手と下手にある木の枝に吊るされた丸提灯の大小で奥行きを感じる。高揚感で思わず、わぁっと声を上げてしまうほどでした。
舞台の奥にある壁や扉は、漆を思わせる黒い光沢が高級感。表面に描かれた桜や松に、照明で色がついているのだと気付いたのは、数回見てからだったような。上演前から隅々まで楽しみました。
総勢20名の白塗りメイクや鬘はもちろん、役者紋や役柄モチーフをあしらった衣裳も本格的。
義太夫を元にしたという台詞回しが異国の言葉に聞こえたのは最初だけ。絵本でなんとなくストーリーを踏まえておいたお陰で、リズムに身を任せていたら本当にあっという間の3時間弱でした。
まじりっけなし、花組芝居100%の一体感に、これが今まで培ってきたものなのかと、ひたすらに圧倒される。
外部出演で垣間見えた個性の響かせ方や、逆に全く見たことのない目が覚めるような一面も、どれもこれも素晴らしく伸びやか。
何よりも、座長の加納幸和さんと笑いの趣味が合うのだろうところが、心地よさのポイントで。
どんな作品が来ようとも絶対に見逃せない劇団に出会えたと確信しました。
30周年は三大名作残り一つの義経千本桜か、それともほんとうに妹背山婦女庭訓か。
青山円形劇場での泉鏡花の夜叉ヶ池の再演、まだまだしつこくお待ちしてます。