明るい家族、楽しいプロレス! 公演情報 小松台東「明るい家族、楽しいプロレス!」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    役者の圧倒的な描写力を映えさせるリング
    古き良き時代(といってよいのかわからないけれど)の家族の話。
    そこに編み上げられる時間のふくよかさと
    役者たちの力が描き出す人物の実存感に
    息を呑みました。

    ネタバレBOX

    食堂と居間の舞台、
    テレビとビデオが下手におかれて・・。
    そんなに貧しい感じもなく、
    むしろどちらかといえば豊かな家庭なのだと思う。

    物語としては、恣意的に複雑さを避け、
    その家族と訪れる人々のその場での風景を
    切り取って見せたような感じ。
    でも、脚本の秀逸は、その風景のあるがごとくのままにして、
    登場人物たちがの抱えるものや心情を描き出していきます。

    そして、そこに置かれた役者たちの表現力に目を瞠る。

    その家の姉弟たち、弟の小学生には
    子供の放埓さと無垢さが絶妙な力加減で編み込まれていて。
    役者から伝わってくるもののすべてが、
    まるで魔法のように一人の少年のものとして
    観る側に刻み込まれていく。
    姉の中学生の不機嫌さもしかり、
    思春期の自らがコントロールしえないような感覚が、
    少女の微かな危うさをまじえて組み上がってくる。
    母親の、母としての包容力と、
    その年代の女性としての歳を重ねる心情には
    観る側をふっと取り込むような奥行きがあり、
    その友人の女性の、
    子供を愛する心情も、そのキャラクターや
    一人の女性の歩み続ける時間をしなやかに取り込んで
    紡ぎ出されて。

    姉が恋心を描く同級生には、
    少しだけ姉からの見え方を意識したようなデフォルメがあって。
    以前に観た非常に狭いスペースでのお芝居でも
    想いの現し方に感心した役者さんですが、
    今回のお芝居にも
    デフォルメの切先から引きだされた思春期的な生々しさがありました。
    喘息持ちの親戚のおにいさんの突っ張り方にも
    可笑しさに加えて、ちゃんと裏側を垣間見せるニュアンスがあって。

    父親には、男としてのカリスマ的な実存感があって。
    親としてだけではなく、夫として、社長としての顔が
    男としての生き様を編み上げて
    その一つずつの態に華がある。
    妻が離婚を踏みとどまる理がしっかりと作り上げられていて感心。
    また、父の友人の醸し出す、
    胡散臭さにも心を惹かれて・・・。

    しかし、何よりも凄かったのはお爺さん、
    これまでも、いろんな舞台で、
    役者のお芝居の秀逸さは見知っていましたが、
    今回の演技は更に突き抜けて藝術的ですらありました。
    一瞬出落ちかと思わせるようなインパクトも下地に過ぎず、
    そこに重ねていく老人の描写に息を呑む。
    視線の動かし方で老いを表現しつつ時間を紡ぎ、
    言葉の枯れを操って場の空気をすっと染める。
    そこまでのリアリティに自転車の変速機ネタを
    てんどんでのせていくのが、 もうたまらなくおかしくて。

    役者たちの力が鮮やかに引きだされ、
    解き放たれ、さらにそこから踏み込んで、
    それが、ある時代の家庭の風景として
    きちんと観る側に収まっていく。
    そして、その場にあって、その時代の当たり前の時間を過ごす、
    家族とそれを取り巻く人々の一人ずつが
    とてもいとおしく思えてくるのです。

    美術や照明なども、とてもオーソドックスでシンプルなのですが、
    織り込まれたプロレスネタやひょうきん族の音声などが
    場をその時代に染めてくれる。
    また、シンプルであるがゆえに、作りこまれた役者たちの演技が
    リングのプロレスラーの如く映えたりもして。

    観終わって、良質の喜劇を観たような感触も残りつつ、
    でも、少し時間が過ぎると、
    それだけではない、
    ゆっくりと降りてくるもう一段深い部分のペーソスがあって
    深く染められてしまいました。

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    2012/11/25 09:08

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