満足度★★★
楽しい歌と芝居
モリエールの戯曲をノゾエ征爾さんが現代の日本人でも楽しめるように脚色した台本を、1673年の初演の時に近い形の、役者と歌手とオーケストラによる編成で上演し、300年以上前の作品にも関わらず、普通に笑える喜劇となっていました。
本筋とは関係ない、ルイ14世を讃えるプロローグが、医学部受験の予備校でのシーンに置き換えられていて、元々の歌詞ともあまり合っていなくて意図が分からなかったのですが、実は最終場面の医者達の形式的な儀式のシーンと重なり合うようになっているという伏線の張り方が洒落ていて面白かったです。
第2幕間劇ではシックな赤いドレスにサングラスを掛けた6人の女性(1人は背の高い男性アルト歌手が女装)が青い帯を持って妖艶に動くシーンは、いかにも宮城聰さんらしい演出で独特の美しさがありました。
役者が指揮者や演奏家にちょっかいを出したり、演奏家が役者の動きに合わせて楽器で効果音を出したりと、オーケストラピットを設けず、同じステージ上で演奏と演技が行われるという条件を上手く使っていて楽しかったです。
SPACで上演されたストレートプレイ版の『病は気から』をベースにしたとのことで、オペラ版としては初日でありながらも役者達のコミカルな演技が冴えていて楽しかったです。
歌手の人達の演技も達者で、特にエミリアーノ・ゴンザレス=トロさんがユーモラスに何役も演じ分けていて見事でした。
現代のピッチより1音低いチューニングによる演奏は古風で優雅な響きで美しかったです。時には調子外れに演奏したり、ノイジーな特殊奏法を用いたりと、古楽器オーケストラながらも柔軟性に飛んでいて、芝居を盛り立てていました。