十一月花形歌舞伎 公演情報 松竹「十一月花形歌舞伎」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    昼の部「受け継がれる当たり役」
    明治座には数年前に行ったきり。

    今年、猿之助が歌舞伎やるのはこれが最後と聞き、行くことにしました。

    「傾城反魂香」が三代目猿之助四十八撰のひとつと聞いてへぇーと思った。

    なんせ、こちとら(初代)猿翁十種の時代の観客だもんで(笑)。

    吃又というと二世松緑の又平が一番印象に残っている。

    昨年の暮れ、山の手事情社が通しで見せたがダイジェストとしてわかりやすく、いずれ、当代が通しで見せても面白いのではないだろうか。

    文楽でもなかなか通しで出ないからそちらも観ておきたい。

    「蜘蛛絲梓弦」は先代の初演を観ています。六代目歌右衛門や現藤十郎が扇雀時代も手掛けてますね。

    先代で観たときより格段にショーアップされていて初演の時とだいぶイメージが違う。

    頼光の家来がたくさん出るうえ、蜘蛛の眷属がたくさん出てきて派手な演出になっている。


    ネタバレBOX

    「反魂香」は、高嶋館の虎の演技がすばらしい。

    義太夫に乗って足拍子を踏むところ、やはり勘所がよくないとだめで、芝居心が試される役だ。

    昔は「馬の足」と言って動物の中に入る役者をさげすむ代名詞のようにされたが、最近は馬の足の配役も書くようになったとか。

    この虎の配役も書いてよいと思う。

    幕内に通じた人ならだれが演じてるかご承知なのだろうが一般客はわからないからだ。

    これが国立劇場なら受賞対象だろう。

    又平の右近は東京暮らしが長いが、もともと上方の人なので、こういう義太夫狂言に可能性を広げてほしい。

    一時は右近が猿之助を継ぐと言われたこともあっただけに、将来は澤瀉屋のお師匠番になる人。猿之助の持ち役を長くそばにいて師範代のように観てきた人

    だから、今後も当代との当たり役での分担がみられるだろう。

    おとくの笑也は丁寧で、古風さに欠けると言われたこの人もこういう世話物ができる役者になったのかと感慨深い。

    私から見ると予想以上の出来だった。

    又平は音羽屋型と初代と二代猿翁それぞれの工夫の澤瀉屋型の折衷らしいが新聞評にもあるように多少ぎこちなさが残る。

    このへんも今後練り上げられていくことだろう。

    「蜘蛛絲~」は、猿之助が禿の房紐遣いで踊りの才を見せた。

    二代、三代、当代へと舞踊の才能は受け継がれているようだ。「黒塚」の出来には不満が残ったが(笑)。

    二代と三代の舞踊写真を比べると、踊り手としての足の確かさがみてとれる。

    私の亡き母は若き日に初代猿翁を花柳流の大先輩として大変尊敬していて踊りがとても勉強になったという。

    (先代猿之助からが藤間流である)。藤間のほうが踊りが地味なんだそうで、先代に確認したらやはりそうだと言っていた。

    当代は早変わりで消える際の蹴込がきれいで先代を彷彿とさせる。

    火鉢に座頭が消えるのも先代以上に鮮やかだった。

    女郎蜘蛛の精になってからお得意の化身モノ、迫力満点で客を沸かせ、さすが澤瀉屋である。



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    2012/11/22 20:55

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