F/T12イェリネク三作連続上演 『レヒニッツ』 (皆殺しの天使) 公演情報 フェスティバル/トーキョー実行委員会「F/T12イェリネク三作連続上演 『レヒニッツ』 (皆殺しの天使)」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★

    隠ぺいの構造
    終戦直前のオーストリア・レヒニッツ村で発生した、ナチスによる
    ユダヤ人の虐殺を背景とした、ひとつの事件が隠ぺいされ、

    それどころか、記憶まで書き換えられていく。その様が舞台として
    再現された本作。観ていて、最近上演されたNODA・MAP『エッグ』と
    テーマ的には被る部分が多いと強く感じました。

    ネタバレBOX

    過去は、人が記憶に留めておく以上、時の経過によって
    改変されていく。それは仕方のないことです。

    なら、意図的に集団ぐるみで隠ぺいされたら一体どうなるのか。
    いや、隠ぺいされるなら、まだいつか、真実が白日の下にさらされる
    日が来る可能性があります。じゃあ、記憶が書き換えられていったら
    どうなるのか。

    犠牲者たちが望む真実が大勢の前にさらされる時は永遠に
    来ないでしょう。「彼らを見る視線は無く、彼らの視線もまた
    無い」のであり、ここに犠牲者たちは二度殺されます。

    実際の当事者たちは、過去の衣服を次々に脱ぎ捨てて、新しい
    姿に転身して指弾を逃れ、トカゲのしっぽ切りよろしく、下っ端の
    人間だけが裁かれる構図は、まさに『エッグ』でも描かれた構造で、

    ただし、『レヒニッツ』では忘れ去られるのではなく、隠ぺいされ
    「噂」として消費されることにより、一層真実が分からなくなっている。

    その現在が、簡素な舞台装置に秘められた皮肉とともに、巧みに
    演出されていました。

    ただイェリネクのテキストはお世辞にも整理されているとはいえず、
    これは狙ってのことなのでしょうが、正直、集中力の面では、
    なかなかに厳しかったです。

    後半、イェリネクの視点から、事件が総括され始め、指弾される
    くだりでは、がらっと変わって激越な筆致になり、そこからは結構
    引き付けられたのですが。歴史やドキュメンタリーに興味がある人は
    必見ですが、それ以外となると、どうでしょうね…。

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    2012/11/10 17:12

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