満足度★★★
現代版『ラ・ボエーム』
プッチーニのオペラの名作『ラ・ボエーム』を現代のニューヨークに置き換えて、セクシャル・マイノリティーやエイズ、ドラッグといった要素を絡めてノリの良い音楽に乗せて描いた、ただの恋愛悲劇に止まらない、社会的な問題についても考えさせられる作品でした。
家賃も払えない若いアーティスト達のコミュニティーでの出会い、恋、対立、別れの中で、アートとお金のどちらを取るのか悩んだり、ゲイやレズである為に社会から疎外されたりする様子にリアリティーがあり、『ラ・ボエーム』より共感できる内容でした。
キャストのほぼ全員が日本人の為、黒人やヒスパニックといったエスニック・マイノリティーの問題があまり見えてこないのが残念でした。
ローリー・アンダーソンさんやシャーロット・ムーアマンさんを連想させるパフォーマンス『Over the Moon』は上木彩矢さんの演技がキュートで素敵でしたが、笑いが少な目なこの作品の中で、まとまった時間のコミカルなシーンなので、敢えてもっと馬鹿馬鹿しい感じでも良いと思いました。
曲調がバラエティーに富んでいて、歌唱のレベルも危なっかしい人がいなくて聴き応えがあったのですが、ラップ調の部分は日本語だとしっくりと来ないのが歯痒かったです。
スチールで組まれ、いくつかに分かれて動かせる2階建てのセットは、あまり動かす効果が感じられず、もったいなく思いました。
恋愛や死別で感動させるという個人的にはあまり好みの作風ではなかったのですが、再演が続き、映画化されたのも納得出来る、良い作品だと思いました。