バラバラ姉妹に憐れみを 公演情報 水素74%「バラバラ姉妹に憐れみを」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    なるほど
    一見、ストレートな舞台のようで、
    どんどん雰囲気が変わっていくあたり。
    70分にその流れをきっちりまとめてくるあたり。
    非常に素晴らしい。

    これは登場人物たちのダメっぷりがそのまま作品の評価につながらない
    良い例のような気がする。

    シンプルで、ちょいゲージュツで、寂しさと、ちょっとした優しさがあって。

    「東京っぽい」というと語弊があるのかもしれないけれど、
    自分が最近ようやく認識しつつある漠然とした東京っぽさを体現しているような気もする。

    これが春風舎でなくて中心地のアゴラに投下されるあたり、
    しかも週末を挟んで1週間近くで上演されるあたり、
    アゴラの方向性が水素に向かっていることを示しているような・・。

    ネタバレBOX

    登場人物はみんなバラバラ。

    言ってることがくるくる変わり、よく殴られる女性。

    その女性のことなんかちーとも見てないのに、
    自分のことだけは見てろ、全面肯定しろと言って殴る小太り氏。

    何も信じてないのに、どこかに真実の愛的なものがある気がして内心少し焦っているっぽい?女性。

    女ににりたい、というよりかは、男のままでいたくない男。

    逃げた男の子供を引き取りながら、育児放棄をしてるような女性

    これらの表現が適切かは分からないが、
    登場するのは、なんだかこんな感じの、
    ダメな感じの男女。

    しかもお互い会話がまったく噛み合わず、
    お互いに自分の思い込みを押し付け合っては、
    結局は誰の言うことも理解しているようには見えない。

    なんだかなー、と、思って見ていると、
    最後でそれぞれがひとつにつながってくる。

    それは、たぶんみんなの死んだ(殴り殺されたと思われる)
    母親の想い出みたいだ。

    お互いの対話が全くかみ合っていないのにも関わらず、
    どうやら、母親への愛憎っぽい感情で、
    この子たちの心は実は一つに結びついているみたいだ。

    生きている人間同士では決して分かり合うことはなく、
    ただお互いに孤独なままに、
    死んだ母親の想い出に、想像の世界の中で癒されいていく様は
    非常に寂しく見える。

    そういえば、きのうお袋とニュースを見ていたら、
    息子をエレベータの事故で失った母親が、
    それ以後ずっとエレベータを使えないで階段を使いながら、
    こどものことを忘れないでいる場面があった。

    水素のハナシは、それの逆バージョンだ。

    きっと、その息子は、そんな特別な子じゃなかったんじゃないかな。

    クラスにいたとしても、クラスメートとしてどれだけ印象に残っていたか。

    でも、その母親にとっては特別で、
    そのニュースを見るお袋の目は、
    そんなことは母親にとっては当たり前のことで、
    死んでもいつまでも忘れないのは当然であるかのようだった。

    それが親子逆だったとしたら・・
    このわりとハードな現代社会で、
    そんなんで子が生きていけんのかね、と、思ったりもするが、
    この作品で描いているのは、まさにそこだった。

    恋人に暴力をふるっていた小太り氏は、
    シューマイにグリーンピースをのせるためだけに生きる、
    何も考えないマシーンになってでも生きていくため、
    殴り殺された想い出の母親に、
    自分が言ってほしい言葉をしゃべらせることで、
    命をつないでいくようである。

    ふと思う。

    母親との思い出がなかったら、この子たち、もうとっくに死んでたかもしれないな。

    母親は死んだかもしれないけど、
    この子たちの中に生きてるから、
    子供たちも、自分の中の母親を消さないために、
    苦しくても生きて行こうとするのかもしれない。

    母親は死んじゃったけど、どうもこの子たちをしっかりと支えてくれてるみたいだぜ、と気付いたら、どうもそんな悪い話じゃないな、と、ふと気づいた(笑

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    2012/11/02 23:38

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