秘密の繭 公演情報 劇26.25団「秘密の繭」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    繭は藪の中
    複数の人間の記憶の中にあるひとつの出来事。
    それぞれの思い、思い込み、誰かを守りたい気持ちが交錯して
    真実はもうわからなくなってしまっている。
    わかっているのは「着地点を探すのは自分自身」だということ。
    キャラにはまった役者が生き生きとして魅力的な舞台だった。

    ネタバレBOX

    「中の下」くらいの弁当を売るアカネ弁当店が物語の舞台。
    上がり框の低い店舗兼住居は敷居も低いようで、様々な人が上がり込んでくる。
    ここには店主の茜(中澤功)と中3の娘政美(浅利ねこ)、それに
    住み込みのアルバイト塔子(星原むつみ)が住んでいる。
    そこへある日政美の異母兄 古賀ちゃん(長尾長幸)が久々に訪れる。
    迎えた茜と政美は嬉しいのと同時に彼の真意を計りかねて複雑な思いを抱く。
    7回忌を迎える父親の死に絡む記憶が蘇る・・・。

    冒頭、過去にここで起こったと思われる事件が再現され
    シリアスな話なのかと思っているとそうではない。
    だいたい長身の中澤功さんがスカートはいて“お母さん”だし。
    足がきれいで違和感もなく、すんなりお母さんになっている。
    ハイバイなどで成功している“男のお母さん”って私は好きだ。
    必要以上の女っぽさを排し、清潔感があって母性が際立つ気がする。

    このお母さんと古賀ちゃんが、それぞれ自分がやったと思っている事件。
    その真相は繭にくるまれ、政美を含めた3人はその周囲をぐるぐる回っている。
    まるで「藪の中」みたいに、ひとりひとりが違った風景を記憶している。

    この過去の事件がフラッシュバックのように時折差し込まれながら
    日々ここにやって来る人々が描かれるのだが
    店の日常を断然面白くするのがキャラの立った登場人物だ。

    まず住み込みアルバイトの塔子を演じる星原むつみさん、
    この立膝して弁当かっ食らう豪快な女性が面白い。
    登校拒否になった政美に対して、意外な優しさと的確な言葉を投げかける。
    この人のキャラに勢いがあって雰囲気を牽引する。

    「美術館に勤めながら人の悩みを聞いて小銭を稼いでいます」と自己紹介する
    気功師見習い中国人リーを演じる林佳代さんも面白い。
    いかにもな日本語のイントネーションと大陸的自己中心思想(?)が可笑しい。
    全員で歌を歌ってひきこもった政美を外へ連れ戻そうという(天の岩戸か!)
    “我的方法最上解決”(多分こんな発想だろう)スピリッツ全開。

    ちょっと危ない隣の床屋を演じた杉元秀透さん、“いるいるこういう人”感ありまくり。
    古賀ちゃん役の長尾長幸さんは不思議な役者さんだ。
    イマイチはっきりしなくて優柔不断な古賀ちゃんが妙にリアルなのは
    この人の声とか表情が魅力的なせいだろうか。

    暗転とは別に、役者さんが整然と小道具を抱えて移動する場面転換が効果的。
    役のまま時間の経過を感じさせる移動で、ごく自然に次のシーンに流れて行く。
    ただ過去の出来事の真実は一体どうだったのかがはっきり描かれないので
    若干消化不良な感じが残る。
    古賀ちゃんが“旅に出る”のは自己犠牲なのか“着地点”を見つけたのか
    評価のしようがなくてもやもやする。

    完結させないのは続編につなげるためだとしたら、それもアリだと思う。
    事の真相と、それを人々がどう受け止めるか。
    それがあって初めて、各自の着地点が見いだせると言うものだろう。

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    2012/10/25 03:11

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