『グレイトフル♥ティア~ズ』 公演情報 劇団コスモル「『グレイトフル♥ティア~ズ』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    ”Vシネ系ベタピュア”
    笑いとシリアス、ベタと洗練、混在する矛盾が醸し出す不思議な空気の中で
    ラストは思いがけず泣けてしまった。
    何だろう、これ。
    日本刀も振りまわすが、姉弟や男と女のベタな情愛もあり、という展開は
    “Vシネ系ベタピュア”・・・?

    ネタバレBOX

    倉庫のような事務所、探偵ミカミ(石原義信)がソファで寝ている。
    5年前に別れた恋人日山ゆり(奥村円佳)が夢に出て来て「ミカミくん…」と呼びかける。
    目が覚めるとゆりから手紙が届き「私が死んだら死の謎を解いて」と書かれていた。
    追いかけるように河川敷でゆりの死体が発見され、ミカミは捜査を開始する。
    調べていくと会員制ショー・クラブ「くちべに」と、その裏のコールガール組織が浮かぶ。
    ゆりは一体誰に殺されたのか、ミカミは「くちべに」に乗り込む・・・。

    ミカミの夢や過去の出来事の場面では透けるようなスクリーンが下りて
    そこにどでかい文字で台詞が映し出されるのがアナログで面白い。
    探偵事務所の壁に冷蔵庫や黒電話が収納されているのも面白い。
    すっきりコンパクトな空間でおしゃれな探偵物語が始まるかと思いきや
    昔懐かしいコントのような刑事の兄(鳥飼卓司)が出て来てびっくり。

    「くちべに」の主いばらを演じる作・演出で主宰の石橋和加子さんがすごい存在感。
    父親から暴力を受けて育ったいばらは
    その父が女と出ていった後、弟を手にかけようとした母親を殺して少年院に入った。
    15歳でシャバに戻って弟と暮らし始め、
    やがて政財界の大物を顧客に持つ会員制高級クラブ「くちべに」を運営するようになる。
    クラブで歌い踊る一方で、人を殺めた時の記憶を失っているいばらの表情が良い。
    大げさでコントのような周辺の芝居は、結果として
    いばらの重い人生と姉をかばおうとするヤクザな弟一角(山内康央)、という
    主軸のシリアスさを際立たせている。
    姉が母親を殺した理由を知る前の一角のやり場のない憤りやいら立ちの表現に説得力があった。
    いばらと共にクラブを運営している男Viper(山本光政)、最初は違和感もあったが
    最後彼女の名前を呼ぶところ、優しくて哀しくてとても良かったと思う。

    この姉と弟と男の情や、ミカミと一角の日本刀による殺陣などのテイストが
    まさにこてこてVシネ路線な気がするのだが、私はこれが結構好きだ。
    ミカミとゆり、ミカミと一角の関係がベタな演出ながらとてもピュアに感じられる。
    ミカミと一角の握手の場面など、タメも長いが引っ張りも長くて歌舞伎のようなテンポだ。

    ちょっと残念だったのは、ミカミがゆりの遺体を最初に見た時の反応。
    忍び込んだユリの実家で、刑事の兄との対面に驚いてゆりの遺体との対面がおろそかになった。
    ラスト、ミカミが目を閉じてゆりとの再会をかみしめるところが
    超ベタな演出ながら何だか泣けてしまったほど良かっただけに
    途中もゆりとの関係を大切にして欲しかったと思う。

    ダンスはもう少しレベルアップして絞り込んだ方が効果的な気がした。
    ミカミのキーボード演奏など、前後の準備が必要なものは舞台の流れをさえぎりがちだし、
    役者がソファを移動させたり小道具を手渡ししてハケるところなども
    演出の工夫でもっと整理できるのではないかと思った。

    いばらのキャラが鍵を握る展開が面白いだけに、
    ミカミと一角のひとすじの涙がより浮き彫りになるような演出に期待したい。

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    2012/10/14 02:44

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