『ヒッキー・ソトニデテミターノ』 公演情報 パルコ・プロデュース「『ヒッキー・ソトニデテミターノ』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    寝て起きてご飯食べてゲームして
    それまでパルコの舞台上規模?で公演を見ていた広さの小劇場からパルコ劇場という、メジャーな劇場へ一歩足を踏み入れた岩井さんの連続代表作の上演。例えが酷いかな‥?
    役者さんがステージ上で待機してる姿が見えるいつものシンプル設計舞台。
    劇場は変わっても肩肘張らず何時もの岩井節が漂い、吹越さんが入りこんだらお洒落感ある雰囲気になるのではないか、と発表時は懐疑的だったけど、劇中少し歳を取った元ひきこもり男を見事に表していました。

    ネタバレBOX

    寝て起きて、ご飯食べて、ゲームして息抜きのプロレス技かけあいこしあうような日常。それを日々見ている家族。
    20歳の青年と40歳の中年引きこもりを抱えた2家庭と、それを支援する団体。
    ひきこもり支援団体のお兄さんとお姉さんが問題家庭へ訪問し、本人同士が出会う初対面は緊張を伴うと思うが、彼ら流の年期の入った治療活動により次第に心を開けさせる。それによって家族も好転の兆しが見えるがどこかでほころびも見られ、そんな情景に問題の根の深さやその接し方と生活していく生き辛さやぎこちなさが窺える。
    ドキュメンタリーとかだったら深刻さとかが全面に出そうだけど、そこは岩井さんの独特なケムに撒くようなセンスで時折笑え、また行動の深刻さに考え込ませたりと、見ているうちに自問自答しているような話の展開に惹き込まれて、彼らとその家族、それまでの登美男の体験と併せて、行く末を静かに見届けていたくなるような舞台。
    予期せぬ行動を起こした支援者。苦悩と繊細を合わせ持つまで成長した登美男に衝動的な行動はないと思うが、そこからスローペースで生きていってほしいと願わずにいられない。
    黒木お姐さんのシンプルなセリフのやり取りなのに、句読点のない滑らかな喋りが毎回聞いてて癖になる。スタッフとしての指導者ぷりが良い。もし同業だったら、別の部署から彼女の働きっぷりを参考にしたいけど、マネは出来ないなw。毎回、無味乾燥気味にも見えるがそれが黒木さんにとっての自然体なんだろう。不思議で魅力的な雰囲気が増していた。

    鈴木家の占部さん、悩んで悩んで人の手を借りてやっと人並みの生活を得て一安心かと思いきや、鈴木家の小河原さんの気力崩壊しそうな行動とその裏返しにも思えるようなタンコブ姿と踊る行為にまた苦労の予感。が、やっぱり夫婦個別の悩み事の行く末に生真面目さと不器用さが可哀相だけど可愛いくも見えた。長年暮らすと、いつから似た者夫婦になってしまうんだろう。
    斉藤さんの古館さん、佇まいと発言のインテリジェンスさが見事に一致してるけど、時折見せるブラックな毒が効いている。彼のあの行動は最後、何を見て何か独り言ちていたんだろうか。
    ベテラン寮生その他、有川さんの七変化も面白かった。格好で判断してはいけないが、最後の考えたあげくあの選択した姿の有川さん良かった。
    登美男の妹、綾の岸井さん、毎回ハキハキっぷりの性格が静かに進行していく舞台の中で、森田家の家族の救いにも見える。
    太郎くんの落ち武者ぷりのインパクトは笑えたが、十代特有の掻きむしりたくなるような焦燥感やこれからの世渡り下手というか不器用貧乏加減がわかる。
    斉藤母、希望の道筋が見えた方向だったのに、心強い味方になる人に出会えたのが遅過ぎたのか。一瞬の希望が残酷になってしまったのが切ない。

    騒ぎ立てるような盛り上がり方はしないけど、全体を受け止める彼らの変化する様をこれからも見続けたくなる余韻ある良い舞台でした。

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    2012/10/09 12:04

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