満足度★★★★★
リピートの理由
毎日「ゴベリンドンの沼」を観て来た人達のコメントを読みながら
「もう一度あの空間に身を置きたい」と思うのはどうしてなのだろう。
そして千秋楽、私は再び廃工場の前に立っていた。
当日券の、最後の最後の方に並んで見切り席に座った時、
ここで34回目のステージに立つ5人のことを考えてなんだか泣きたくなった。
ゴベリンドン(高橋倫平)の慟哭と関節が外れるかと思うほどの動きが素晴らしい。
彼の「すまない…」と言いながらのたうちまわるような苦しみが
誰もが持つ弱さと死への怖れから生まれたものであるだけに、一層切なく哀しい。
この異形の者が深い共感を呼ぶのは、設定の巧みさと高橋倫平さんの演技力だろう。
今回は私の足元に照明があったこともあり、照明操作の繊細さや
音響のタイミングの完璧さも感じることが出来た。
最後のステージを終えて挨拶したらすぐ、預かった客の靴を運び、台本を販売し、
乾杯の飲み物を配る5人の動きを見ていると
何か他の公演とは違う“心地よい温度”を感じる。
5人の演技だけでなく、客席や美術や廃工場といった
芝居を取り巻く全てのものが、来る人を歓迎してくれる。
何度も足を運ぶリピーターもきっとそれを感じているのだと思う。
頬に涙の雫を描いたメイクが流れて落ちている5人の顔を見て、改めて判ったのだ。
私は今日ここへ、ただこの5人に会いたくて来たのだと──。
私はもう次の舞台を心待ちにしている。