ねぼすけさん 公演情報 バジリコFバジオ「ねぼすけさん」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    ラストとその展開には唖然とした
    と言うか、うあぁぁ、となった。
    いや、うえぇぇぇ、かも。
    いやいや、うへぇぇ、かも。
    いやいやいや……。

    ネタバレBOX

    バジリコFバジオってもの凄く好き。
    まずこれを言っておこう。

    で、今回は、バジリコ感がなかなか盛り上がってこないんだなこれが。

    昭和の30年代ぐらいのホームドラマ、サザエさん的なやつが展開していく。
    「ねぼすけさん」なんていうののほーんとしたタイトルも付いていたりする。

    もちろん、いつもの、少しダークでPOPで、キッチュなバジリコがそこここに姿を見せるのだが、そこへドンドンと行くことはない。
    いつもならば、変な兆しが現れたと思ったら、一気にその世界に、有無を言わさず、そして観客を置いてけぼりにしても構わないという形相で、バジリコFバジオの世界に疾走していくのだ。

    しかし、今回は、なんとなく奇妙なのだ。
    どうも背筋が寒いというか、楽しいはずのホームドラマの後ろに、ゾクゾクするような恐ろしさがあるようなのだが、それはなかなか姿を現さない。

    人形も、いつもほど活躍しない。
    いや、猫も催眠術師も、いつもの「顔」をしていて、いいのだが、それはそっちのけで、サザエさん的、欺瞞に満ちたホームドラマ(笑)に落とす陰のほうに意識を奪われる。

    そして、どうにも救いがない話。
    明るいはずだったのに絶望的な物語。

    バジリコFバジオのいつものキッチュさからは極北にあるようなイメージさえする。

    しかし、これは「今」なのだ。
    今上演しなくてはならなかった作品ではなかったのか、と思う。

    今いるところは、「まやかし」である、そんなことに気がついている「今」。
    あえて、「フクシマ以降」と言ってしまうけど、我々が日常演じている「ホームドラマ」は、砂のように脆くも崩れやすい世界でもあるということだ。
    この舞台の当パンの冒頭に書いてあるように、戯曲を書き始めたのが昨年(2011年)の3月から4月というのだから、ソレが影を落とさないわけがない。

    地球が、環境が、なんていう規模の話ではなくても、ついいろいろと「疑って」しまう「世界」が、あらゆる場所にあった。そして今もある。それが一番色濃く出て来るのが、生活の最小単位でもある「家」である。「家」にこそ、「疑い」が潜み、影を投げかける。

    「これやばいよ」っていう状態なのかもしれなく、意識の底には常にそれがちらつきつつも、「今」はいつまでも続くと勝手に思っている。
    しかし、やはり「やばかった」のだ。そんな物語。

    めめ男が静かに真相を語る姿に背筋が寒くなり、ラストの人型の砂に戦慄する。
    現実が終わってしまったのではなく、本当の現実の姿を突き付けられたようだったからかもしれない。
    SFは、未来へ続く現代の警鐘というだけではなく、現代そのものを映す鏡としても機能する。

    電気屋のヨーゼフKという名前(カフカの『審判』の主人公と同じ名前)が示すように、きな子たちは「監視」されていて、そして事実を知って、その運命に逆らおうしても翻ることはない。
    カフカの『審判』は不条理だったが、今、現実が「不条理」なのである。そんな世界に、私たちはいる。いろいろ不条理なことが多すぎる。
    バジリコFバジオをして、こんな世界を描かせてしまったのが「現実」だ。

    笑いながら見ていた、ホームドラマのエンディングはこれであったのだ。

    前説がいつもの2人(?)で楽しく行われていただけに、この展開はインパクトがありすぎた。
    「ねぼすけさん」という呑気なタイトルも重くなっていったし。

    ただし、ちゃー坊にまつわる、催眠術師や泥棒などのエピソードは、いつものバジリコFバジオであった。しかし、ちゃー坊が体験した、隣に住む友だちのエピソードは、やはり背中が寒くなるようなものだったけど。
    痛くても酷くても「笑い」にするのがバジリコFバジオ流だと思っていたのだが、ここは攻めてきたのだと受け取った。

    役者は、きな子を演じた浅野千鶴さんのけなげさがとてもよかった。
    バジリコFバジオのメンバーは、脇を押さえるような役回りで、今回の作品のトーンに合わせて、弾けすぎないようにしているようだった。
    ちゃー坊役の佐々木千恵さんもいい感じだった。バジリコFバジオが描く、いつもの子どもという感じに救われた。

    バジリコFバジオは、生まれ変わろうとしているのかどうかはわからないが、バジリコFバジオ・ワールドからは大きく外れてはないものの、振り幅の大きな作品であったことは確かだ。
    いつもの(ひっとしたら「今までの」)バジリコFバジオもとても好きだが、今回のこれも好きだ。
    まあ、毎回、救いがないのもアレなので、こういうトーンであったとしても、「お手柔らかに」というところだけれども。

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    2012/10/03 08:53

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