ゴベリンドンの沼  終了しました!総動員1359人!! どうもありがとうございます! 公演情報 おぼんろ「ゴベリンドンの沼  終了しました!総動員1359人!! どうもありがとうございます!」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    立ち上がるキャラクター
    主宰の末原拓馬がきれいな顔で情熱的に語るから
    その青いパッションに惹かれて人が集まるような印象があったが、
    それは大きな誤解だった。
    5人の役者の一人ひとりが創り込む登場人物が何と魅力的なことだろう。
    廃工場のシャッターの内側は、痛みを伴う大人のファンタジーの世界だった。

    ネタバレBOX

    廃工場の中が丸ごと物語りの世界になっている。
    廃材を利用したという飾り付けも、役者の衣装も、
    観る者を架空のその国へと惹き込む。
    悲劇に悲劇が重なるようなストーリーの根幹にあるのは
    人間の尽きることのない欲望と孤独を怖れる気持ち、
    そして大切な誰かを守ろうとする、身勝手なほどの愛情だろうか。

    役者がそこにいるだけで、一人ひとりのキャラクターが立上がって来る。
    ゴベリンドンを演じた高橋倫平さん、高い身体能力を生かした
    縦横無尽の動きが魔物の孤独と哀しみを一層引き立てている。
    “死ねない運命”にもがき苦しむゴベリンドンの慟哭が
    びんびん伝わって来て素晴らしい。

    死体洗いの老婆ザビイを演じたさひがしジュンペイさん、
    欲の塊のようなこの老婆は、金品も欲しいが
    実は人々から一目置かれたくて仕方がないという
    孤独の裏返しのような欲求にまみれている。
    その観るもの誰にでもある俗っぽい気持ちを
    見透かすような台詞に魅せられる。

    二人の叔母メグミを演じたわかばやしめぐみさん、
    この人のちょっとハスキーなアルトの声は本当に魅力的。
    “沼の声”として歌う所もミステリアスな感じが素敵だし、
    ちっちゃな顔で、紅一点の華やかさと母親の温かさを両方表現できる人だ。

    兄のトシモリ演じた藤井としもりさん、
    この人の表情や瞳は何か哲学的なものを感じさせる。
    魔物を恨みながらも、その魔物と契約してしまった自分を
    激しく責める気持ちがどこかあきらめに似た表情ににじんでいて
    凄惨な行為に走る心理に説得力を与えている。

    作・演出で弟タクマを演じ末原拓馬さん、
    まずこの世界観を一から作り上げたことがすごいと思う。
    ゴベリンドンの森、沼、伝説と俗世がクロスするエピソード、
    これらを目に見えるかたちにしたのがあの廃工場だ。
    純なタクマがどれほど悲しかったか計りしれないが、
    それでも大好きな兄を一人にはしないというラスト、
    小さな希望の芽を残したところに救いがあって温かい気持ちになった。
    幼さの残るタクマが少しずつ大人になっていくところがとても良かった。

    気温が下がったことに加えて扇風機もあり、劇場は大変快適だった。
    ビールケースの椅子にぷちぷちの座布団がこれまたとても良かった。
    360度スムースに向きを変えて観ることができる。
    都心のヘンな客席の劇場に持ち込みたいくらいだ。

    末原拓馬さんの前説に情熱は感じるが、
    始まりは一気に物語りに入った方が効果的かもしれないと思った。
    この廃工場へ足を踏み入れた瞬間、
    私たちは物語りの世界に引きずり込まれる。
    この劇場にはそれだけの力があるし、
    観客の想像力をもう少し信じても良いと思う。
    もちろん終演後にいろんな話が聞けるのはとても楽しい。
    5人の努力の賜物である特設劇場、
    こういう空間でいつでもロングランできたら本当にいいね!

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    2012/09/25 00:02

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