満足度★★★
けっこうブレヒトなんじゃないか
久しぶりに初見の劇団で、役者全員の顔を覚えてしまった。多分それは役者が「個性的」っていう薄っぺらいことでなくて、脚本家が役者を生かすように書いているということなんだと思います。劇団としての力を感じました。
主宰・蓮行さんの脚本、せりふ廻しがいい。特にラスト手前で、「演劇と経済」というテーマがストレートに表現された長ぜりふは、かなりの名シーン。歌舞伎の啖呵のような、はたまた詩を朗読するかのような言葉のリズムの生み出し方には、劇作家として非凡なセンスを感じました。それだけに、場面転換の際にかぶせる手をひらひらさせる「踊り」や、舞台前面でスポットライトを浴びながら、内心を吐露するモノローグの見せ方がワンパターン過ぎて惜しい。同じことの繰り返しはユーモラスには見えるんですが、やはり飽きてしまうので、演出でバリエーションを変えてほしかった。舞台中央にある銀行のカウンター席を回転させて、話題の中心となる人物を変える美術の使い方が面白かっただけに残念。
「今の若い劇団がブレヒトをどう料理するのか」そんな当初の期待は心地よく裏切られました。作品の翻訳上演でもないし、翻案でもないし、99%ベルトルト・ブレヒトは関係ない(笑) だけど、実際の劇団活動を通して体験したことをもとに、演劇と社会(経済)のかかわりを自分たちなりに問い直すことで、図らずもブレヒトとの共通点があったように感じました。ブレヒト作品を「現代に蘇らせる」と謳う作品が結局、現代的な「演出」だけに陥りがちな中、皮肉にも「ブレヒトだよ!」というタイトルに強い説得力を感じた作品でした。