ナイアガラ 公演情報 劇団HOBO「ナイアガラ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    シリーズ化して欲しい
    新宿中央公園に暮らすホームレスたちを描くほろ苦ストーリー。
    “脇役体質の役者が全員脇役に徹する”とどうなるのかと思ったら
    “ちゃんと舞台で会話する”とこんなに面白いということを見せてくれた。
    厳選された台詞とそれを租借する役者の力、意外に(?)洒落た演出で
    笑いながら、この笑いは久々の上質な笑いだと思った。

    ネタバレBOX

    奥行きのある舞台、ブルーシートの小屋が建っているので
    ホームレスの話かと予想する。

    暗転の後、座っている老人の見事な老けっぷりにびっくりした。
    この山さん(喰始)、度々失禁するが、哲学的な発言で皆の尊敬を集めるインテリじいさんだ。
    口元の衰えなどが自然で、喰始さんってこんなよぼよぼだったっけ?と思うほど。
    この山さんを、口は悪いが親身になって世話する元建設会社社長のクマ(省吾)や
    元床屋の拓(本間剛)、手癖の悪いのが玉にキズのガンちゃん(西條義将)、
    最近仲間に加わった、リストラされた谷田貝(おかやまはじめ)など
    ユニークな面々がそろっている。
    ルポライターだという川本(古川悦史)も毎日のように通って一緒に飲んでいる。
    彼らを束ねるのが、役所や支援団体・ヤクザとも“ナシをつける”社長(林和義)だ。
    彼のさばき方が実に気持ちよく、それは距離感の保ち方が上手いからだと解る。
    ここの住人の、互いの尊厳を大切にしながらさらりと協力し合う姿が実に良い。
    普通の人のようにスーツ着て日銭稼ぎの仕事に行ったりするが
    やはりどこか“ドロップアウトした人間”の哀しみと日陰感が漂う。

    ──この世には3種類の人間がいる。
       敵と味方と無関心だ。

    ──暑さ寒さも空腹も工夫すれば何とかなるが、
       孤独だけはどうしようもない。
       だから人との関係だけは断ち切ってはいけない。

    山さんの言葉をみんな噛みしめていて、
    初めて野宿しようと公園にやって来る挙動不審な人に
    さりげなくかける言葉や眼差しにその気持ちがあふれている。

    脇役体質がそろうと何が違うのだろう、と思っていたが
    相手の台詞を受ける芝居がこんなに会話を面白くするのかと目から鱗の体験。
    かしわ手の場面とか、酔っぱらって同じ話をする件など爆笑もの。
    アドリブなんだか綿密な演出なんだかか分からないけど可笑しさ全開。

    ここから抜け出して行く者、故郷へ帰る者、フクシマへ稼ぎに行く者、
    そしてそっと一生を終える者・・・。
    様々な人を見送って一人公園に残った谷田貝が、新入りに声をかける場面。
    その労わるようなさりげなさは、かつて自分がしてもらったことそのままだ。
    この終わり方が力んでなくて秀逸。
    台詞と言いこの終わり方と言い、すごく洗練されていてある意味洒落た演出だと思う。
    これ、「ナイアガラシリーズ」にならないかなあ、
    毎回変なおじさんが出て来て、みんないろんな人生があって面白そうだと思った。

    本編ではないが、劇団HOBO ホームページの「予告CM」がめちゃめちゃ笑える。
    喰始さんの「森の熊さんを詩吟でやります」って可笑し過ぎでしょ。

    力で押すのではなく、受ける芝居ってこういうことなのかと再認識した舞台。
    この台詞、この会話、私にとって絶対次も観たい劇団となった。

    0

    2012/09/06 04:10

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大