うつくしい革命 公演情報 劇団フルタ丸「うつくしい革命」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    フルタ丸の進路
    結成10年となるフルタ丸が、「ちゃんちゃらおかしい」(当日パンフより)という
    理想と現実の狭間で
    「演じる」こと、それを「仕事」にすること、それで「生活」することを問いかける。
    その上で「当然やるっきゃないでしょ」という決意が示されている。
    前半の抑圧された描写の緊張感と、後半真実が明らかになってからのギャップが鮮やか。

    ネタバレBOX

    元遊園地だったところにある郊外のタウン。
    ここには「二度と演じません」という約束と引き換えに
    生活を保障された元役者たちが暮らしている。
    そこへマツナカ(真帆)というひとりの元役者がやって来た。
    彼女は監視員から、演じることや戯曲の朗読、モノマネ等も禁止されていて
    禁を破れば銃殺も覚悟しなければならないこと等の説明を受ける。

    舞台上手の一段高いところに彼女の部屋は用意され、
    その部屋から広場を見下ろすことができるようになっている。
    部屋には最初からオペラグラスが置かれていて
    マツナカは自然にそれで広場を見下ろすようになる。

    やがてこの安定した暮らしを維持しつつ、ここで演じることができるよう
    革命を起こそうという密かな動きが現われた。
    誘われたマツナカは頑なに拒否するが、やがてあることに気づく──。

    “役者で食ってく”事の厳しさから、次第に疲弊して行く残念な現実。
    作者はこの根本的な“職業的困難”を憂いつつ
    じゃあ、辞めれば楽になるのか、楽になれば幸せなのかと突き付けて来る。
    その姿勢に悲壮感はなく、むしろ笑い飛ばしているところが心地よい。
    しかもラストはマツナカの選択にウルッと来てしまった。

    住民たちの「舞台組」と「映像組」の対立や、内通者の存在などがリアルで
    前半は銃の「パン!」という音も緊張感を呼ぶ。
    エピソード毎の暗転が頻繁で、少し流れが途切れがちな印象だったが
    後半、真実が明らかになってからは勢いがついて気にならなくなった。
    勢い余って若干持って行き方に無理も感じられたが
    マツナカを現世(?)へ戻す為の「強力なワークショップ」だと思えばいいか。
    ならば尚更、マツナカが演じることをあきらめて来た理由づけが弱いのが残念。
    ただ所属劇団が潰れたというだけでなく何か強い理由があれば
    再びそこへ戻る覚悟が感じられるような気がした。

    役者陣が個性的なキャラクターを生き生きと演じていて、
    演じることの根源的な意味を考えさせる。
    母親を演じ、キャリアウーマンを演じ、強い男を演じ、悪女を演じる・・・。
    そもそも人は、どこからが素でどこからが演技なのか曖昧なものだ。

    マツナカが食らったビンタの「びたん!」という快音が忘れられない。
    あれは“現実”の音だ。
    フルタ丸は“現実”を少し距離を置いて眺めながら、
    真面目に自分の進路を進んでいて、その青臭いまでのみずみずしさが魅力だ。
    フルタさん、うつくしい革命はその航路の彼方にあるんですね。

    0

    2012/09/02 04:43

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大