窓からは夏の空が・・・ 公演情報 演劇集団Nの2乗「窓からは夏の空が・・・」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    離婚の理由
    築40年の一軒家のリビングを舞台に、離婚したい人、離婚したくない人、
    離婚した人、一人で寂しい人など様々な人間模様が繰り広げられる。
    役者陣がそれぞれのキャラを生き生きと演じていて充実の舞台だが、
    それだけに離婚したい「理由」が語られないことが最後まで気になった。

    ネタバレBOX

    ダイニングテーブルに椅子が2脚、上手に2人掛けの長椅子というさっぱりしたリビング。
    築40年という年代を感じさせるものは特に見当たらないが
    壁に掛かった数枚の和な感じのタペストリーが少し雰囲気を醸し出す。

    この家の住人瞳(大室由香利)が修造(藤原基樹)に離婚届を突きつけ
    署名捺印を迫るところから物語は始まる。
    もう瞳の引越し先も決まり、あとは修造が身の振り方を
    決めるばかりになっている。
    なんとか少しでも結論を先延ばしにしようと悪あがきをする修造。
    そこへ職場の先輩や大家、それに四国にいるはずの修造の姉までが
    次々とやって来て、ことはちっとも進まない。

    さらに不動産屋が、新しい借り手早苗(江口ヒロミ)と幸一(高沢知也)を
    連れてやってくる。
    ついに業を煮やした瞳が皆の前で離婚を宣言、
    雑誌の離婚特集に背中を押されたと話す。
    偶然なことに新しい借り手早苗は、その雑誌の副編集長だった。
    瞳は、この時とばかりに早苗に特集の内容について尋ねる。
    すると早苗の口から意外な言葉が・・・。

    登場人物がくっきりと表現されていてとても魅力的。
    特に女性誌の副編集長で11歳年下の読者モデルと再婚した早苗を演じた江口ヒロミさん、
    キャリアウーマンとしての自信と、再婚した幸せオーラのバランスが素晴らしい。
    所謂キャリアウーマンによくあるヤな女ではなくて
    思慮深く温かみのある女性として描かれていたのがとても良かった。

    彼女の「好きという気持ちが、信頼や尊敬という気持ちに移行できるかどうか」が結婚の鍵だという言葉、本当にその通りだと思う。
    この説得力ある言葉と、年下の幸一との絆を感じさせる初デートのエピソードが
    その場にいたすべての人の心に染み入るのがわかる。

    瞳も修造もチャーミングな人間なのに今ひとつ感情移入できなかったのは、
    瞳の「離婚したい理由」がよくわからないからだ。
    離婚の理由なんて一つではないかもしれないし、言葉では表現しにくいものだろう。
    でもその“表現しにくいものを一生懸命表現して相手に伝えようとすること”が
    “相手と向き合う”こと、最も”エネルギーを要すること”ではないだろうか。
    だとしたら修造にも観客にも曖昧なら曖昧なままに、伝えようとして欲しかった。
    あんなにひとりで先走って(いるように見える)離婚したがる理由は何なのか、
    修造のはっきりしない性格だけが問題なのか、私は知りたい。
    四国から家出してきた姉が離婚したい理由も「いろいろあるのよ」って
    そりゃそうだろうけど、あなたの「いろいろ」のさわりだけでも話してくれませんか?

    ラスト、姉は四国に戻り、二人は話し合って離婚となったが
    あの“ぐだぐだ逃げ一点張り”だった修造が
    いったいどんなふうに向き合って、何が変わってそのさわやかな表情になったのか、
    そのプロセスが一切描かれないので、若干置いてきぼり感を覚えたかな。
    あの二人がもう一度考え直す余地がありそうな結末は、
    希望の気配があって良い終わり方だったと思う。

    それから聞きにくいことを率直に口に出しちゃっては
    周囲から口を抑えられたり「それを言っちゃう・・・」とたしなめられたり、
    というパターンが多すぎて、その言い方でしか質問できないのはちょっと残念。
    この辺がコントっぽくて、魅力的なキャラのなのに会話の仕方が勿体無い気がした。

    終盤、真ん中から外へ左右に大きく押し開く窓を開けた修造の視線の先には、
    夏の空が広がっているのが感じられた。
    人を呼び人を包み込む、この古い一軒家の佇まいが浮かぶようだった。

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    2012/08/23 00:38

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