富裕 公演情報 monophonic orchestra「富裕」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    リーディングのだいご味
    リーディングの面白さは、動きが限定される分台詞に集中できる事だ。
    それはそのまま役者さんの力量が露わになることでもある。
    須貝英という人の抽出する会話のリアルさが際立つ公演だった。

    ネタバレBOX

    「浮遊」に登場するのは1人の男(大石憲)と2人の女(安川まり、伊佐千明)。
    “失踪”というちょっと衝撃的なキーワードが介在する微妙な関係の3人。
    富裕とは所有する“量”ではなく“質”の問題なのだと思う。
    多くを所有することより、何をどこまで所有するか、その深さが問われる。
    所有の仕方が浅いと、人は不安になって
    相手を試したり傷つけたくなる──。

    安川まりさんの、どうしようもない喪失感が痛々しく
    ラストの悲しみと同時にどこかほっとした表情が良かった。

    3人の関係が、過去と現在を行き来しながら描かれる。
    それにしても男はどうしていつも答えを出さないのか。
    女が突きつけたものに従って生きているように見える。

    「ファーファーファーファー、ファーラウェイ」は2人芝居(片桐はづき、櫻井竜)。
    台詞の醍醐味とリアルさで、この日一番印象に残った作品。
    高校生2人の電話での会話から始まるこの話は、
    冒頭のリアルなやりとりで一気にひき込まれた。
    ディズニーシーに2人で行きたいけど、相手が少しでもそれをためらうようなら
    みんなで行こうって言おう・・・という手探りの期待感が伝わって来て微笑ましい。

    上手と下手に離れて向かい合っていた役者2人が
    少しずつ歩み寄ったり離れたりするのが彼らの関係を視覚的に示して面白い。
    ここでも女が「もう友達同士には戻れないのを覚悟の上で」告白しても
    男は明確な返事をしない。

    その後も節目節目には電話で連絡を取り合いながら細いつながりを絶とうとはしない2人。
    自分が所有したい相手から、「所有したい」と言われない失望感を抱えてきた女が
    「さよなら」と言ったとき、ようやく大人になったのかもしれない。
    告白のときの片桐はづきさんの初々しい覚悟と
    ラストの「さよなら」が切なくて泣けてしまった。

    生き生きと躍動感ある会話が楽しく、話の弾む高校生の会話を隣で聴いているよう。
    この会話の再現が素晴らしい。
    単なるイマドキのてれてれした会話の再現ではない。
    きちんと再構成されていながら“平成24年の会話”になっている。

    あえて間を置かずに会話の内容で時間の経過を知らしめる方法も、
    テンポを落とさず全体の流れを止めることもなくて良い。
    2人が常にテンション高く、快活で、話題を選んでいるのは
    相手に不機嫌な声を聴かせるほど親しくなれない2人の関係を物語る。
    この戯曲は、リーディングでもう完成されているような気がする。

    もうひとつは「一人寝の夜に」という小説の朗読。
    ホチキスの村上直子さんの朗読で
    須貝さんの繊細な目が感じられる作品。

    「浮遊」の本公演はどこがどんなふうに変わるのだろう。
    須貝さんの人間観察の鋭さと共に興味が尽きない。
    わずか20名ほどの観客を前に演じられるという贅沢なひとときを堪能した。

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    2012/08/12 01:58

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