荒野1/7【全日程終了・ご来場いただきました皆様ありがとうございました!】 公演情報 鵺的(ぬえてき)「荒野1/7【全日程終了・ご来場いただきました皆様ありがとうございました!】」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    個々が突き刺すものと、その重なりが引き込むもの
    舞台上に束ねられ散逸していくキャラクターたちそれぞれのベクトルに目を奪われつつ、それぞれが歩んだ時間に染められていても抜けきることのない、血の肌触りに強くとらえられました。

    ネタバレBOX

    初日を観ました。

    予想外の場内のレイアウトに少し戸惑う。
    早めに入場できたのでとりあえず中央付近の席にすわる。
    なんというか、舞台と思われるスペースには
    どこかぶっきらぼうで、
    そのくせ開演前から観る側を引き寄せる雰囲気があって、
    座席に腰を下ろしたとたんに観る側にある種のテンションが生まれて。
    そして、音楽が舞台上に近づき、
    最初の人物が現れ、物語に切り取られた時間が
    動き始めます。

    終演時には中盤からのシーンに圧倒され
    印象が埋もれてはしまうのですが、
    登場人物たちが揃うまでの場の組み上げが
    実にしたたかで・・。
    一人が二人となりさらに加わっていくたびに
    細微に空気の色が変わり
    人物やその場のディテールを追わせる力が舞台に生まれていく。
    そして一人を残して舞台が満ちるころには、
    観る側は彼らの関係とそれぞれが抱くもの、
    そして彼らがここに集った理由を彼ら自身とともに
    知ることになって。

    ひたすら正面を向くキャラクターたちは
    それぞれの風貌や想いや、
    その境地にまでいたる彼らが過ごした時間や感覚の切っ先を
    観る側に突出し刺し貫いていきます。
    キャラクターどおしにとって相容れることのない軌跡を
    観る側は立ち向かうようにすべて受け取って・・・。
    その重なりに、彼らがそれぞれを貫けば貫くほど浮かび上がる
    原点の質感が広がっていくのです。
    そして、枠組が露わになるなかで
    最後の登場人物が現れ、
    彼らが切っ先の後ろに抱く同じ時間を
    同じであり異なるその立ち位置から
    さらに揺さぶりあからさまにして。

    彼らの実存感の先にいくつもの視点から描き出れていく
    父母の姿が概念でなくその時間を生きる男女となり
    兄弟の時間が歪みの中に瑞々しさをもって観る側を取り込んでいく。
    再び集った彼らの決断の向こうに
    その事件から背負ったものだけにとどまらない
    彼らが生を受け、その場にあり、更に歩み今を過ごすことの質感が生まれ、
    それぞれの距離に至る彼らに流れる同じ血の逃れえない感触に
    強く深くとらえられて・・・。

    気が付けば、
    目の当たりにした荒野の風景の先に描き出される、
    作り手の世界に首までどっぷり浸され、
    彼らが、さらには自らも含め人が、
    その血を内包して歩み続けることの、
    逃げ場のない、冷めることのない温度を持った禍々しさに
    立ちすくんでしまっておりました。

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    2012/08/11 12:57

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