満足度★★★
私には今一つに感じられて……
高評価のレビューが多い中で、少々書きにくいのだが……。
SF風、宇宙ロマン風の素敵な作品が観られる、
と期待していたのだが、私としては少々期待外れだった。
主人公に限らず、登場人物はそれぞれ、
それまでの過去に何かを背負っているのだが、
それらの扱いが浅いように感じられた。
何だか、淡々とストーリーが進んで行く感じがして、
もうちょっと、各場面場面に感銘の残るものがあっても良いだろう、
そんな気がした。
この台本、どこまでが毛利さんの原作に則っていて、
そしてどこまでが自由に脚色した部分か、私には分からないのだが、
もっとロマン性、子供らしい空想、神秘なるものへの憧れ、
そんなものを、本当はもっともっと湛えているのではないか?
それから、幼い子供が、ロケットを作り上げてしまう、
というのも、少々考えにくくて、
頭の固い私にはちょっと付いていけなかった。
以下は余談だが、宇宙に行くというのは、
極めて科学の先端部分の話であるのはもちろんだが、
一方で、不思議なもの、神秘なものへの憧憬という要素もある。
この両者の関係について、全くの個人的見解を一言。
「神秘」の要素が昂じた(?)場合について、
古い本だが、立花隆さんの著作『宇宙からの帰還』(中公文庫)という、
宇宙飛行士を取り上げたものがあって、
それによると、宇宙飛行士の中には、
宇宙から見える地球や星々が、あまりに神秘的であるのに心を打たれて、
帰還後に聖職者になってしまう人も案外多いそうだ。
もちろん、宇宙に行ったことのない私ではあるが、
地上からの風景でも、強く心を打たれることもあって、
何となく理解できるような気もする。
で、私は、かつてFM番組で、毛利さんが宇宙の話をされているのを
たまたま聴いたことがあって、そこでは立花さんの著作のような、
極めて神秘主義的な話は無論なかったのだが、
それでも、「科学者の話」というよりは「芸術的・精神的な話」であったことが印象に残っている。
多分、毛利さんも、程度は別として、
神秘なるものを直観したのではないかなあ……FM放送を聴いていて、
勝手にそんなことを思ったことを思い出した。
そして、この作品も、本当はもっと、
そういう要素を含んでいるのではないか?
やはり勝手に、そんなことを思っている次第である。