『熱海殺人事件』(作・つかこうへい) 公演情報 モウムリポ(ポップンマッシュルームチキン野郎課外活動)「『熱海殺人事件』(作・つかこうへい)」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    疾走するパン一男たち
    前説のCR岡本物語が白いブリーフ一丁で登場したとき、その姿にある予感がしたが
    “ガガ”に扮して歌い踊った増田赤カブト以外、
    出演者は全員ボクサーパンツ一丁である。
    パン一の男たちは、立ち見も出たゴールデン街劇場を90分間走り抜けた。

    ネタバレBOX

    伝説の刑事木村伝兵衛の元へ、富山から熊田留吉が赴任してくる。
    伝兵衛の下には水野朋子という部下兼愛人がおり、
    捜査報告書を捏造するくらい日常茶飯事の有様。
    女工を絞殺したとして犯人の男が逮捕され、取り調べが始まるが
    伝兵衛の望むストーリーに話はどんどん書き換えられて・・・。
    シケた殺人事件が一流の事件になるにつれて、登場人物の”愛”が浮き彫りになってくる。

    木村伝兵衛(サイショモンドダスト★)は首にお約束の蝶ネクタイ、
    熊田留吉(野口オリジナル)は普通のネクタイ。
    犯人(渡辺裕太)は装飾なし。
    水野朋子(NPO法人)はショッキングピンクのパンツで、首にスカーフといういでたち。

    ストーリーは想像と決め付けによってどんどん変化していくが
    その中で語られる個々のエピソードが強烈な印象を残す。
    犯人にも熊田にも、そして伝兵衛や朋子にも、共通する“愛”の迷走がある。
    みんな上手くいかなくて孤独で、伝兵衛なんか朋子がほかの男と結婚することになっている。
    これはつまり、事件の捜査というかたちを借りて
    自分の恋愛のどろどろを白日の下に晒すという作業でもあったのだ。

    改めてすごい本、台詞の質・量だなあと感じる。
    その台詞をあれだけ聞き取りやすく大音量でキープしているのは
    全員素晴らしいと思う。
    ただ、のっけからハイテンションで始まるこの舞台は、終盤までそれを保とうとすると
    台詞が単調な怒鳴り合いになってしまう。
    サイショモンドダスト★という人は、伝兵衛の、硬軟・清濁入り混じった
    ダメダメで時に哀愁漂うキャラにぴったりだと思う。
    目や声に色気のある人なので、時には音量を落としても十分説得力はあるはずだと思う。
    少し違った演出の、彼の伝兵衛も観てみたい。

    朋子役のNPO法人が落ち着いた声で話す場面が多く、それがほっとさせた。
    揺れる女心をとても繊細に表現していて良かったと思う。
    ちなみにヒゲのまま頬紅を差した顔がめちゃめちゃ可笑しかった。

    犯人が出てきて少し空気が変わった。
    彼が変化して、熊田が変化して、朋子が変化していくのが面白かった。

    朋子が戻ってくるラスト、ディープなキスに笑いながらちょっと安心した。
    いい終わり方だと思った。
    「熱海殺人事件」は、そのテイストがポップンに向いている本だと思う。
    パン一男の熱い90分、果敢な挑戦に大きな拍手を送りたい。

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    2012/08/06 04:48

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