国民の生活 公演情報 ミナモザ「国民の生活」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    しっかりした骨格に支えられて
    4つの短編それぞれに
    物語がしっかりと組み上げられる一方、
    舞台にはつねに中間色が醸され、
    単純に仕組みを描くだけではない
    作り手の創意が伝わってきました。

    ネタバレBOX

    初日を拝見。

    3方を客席に囲まれた舞台、
    主宰の家財道具の一部が並べられて、
    演劇と現実のボーダーがあいまいにされて・・・。

    その中に置かれた4つの物語に浮かび上がる風景には
    どこか「今」のカタログ的な風合いがあって、
    でも、それぞれの物語に足を踏み入れるとは
    その表見からはうかがい知れない奥行きが用意されていて。



    営業の勧誘に躊躇して、さらに躊躇して、
    でもいったん縛めが緩むと
    疑似FXにのめり込みコントロールを失っていくサラリーマンの姿、

    一夜の出来事の対価にお金を渡す男と、
    それを受け取らない女。
    女がしなやかに組み上げるロジックに目を瞠っているつもりが
    そこに男の価値観や抱くものがさらに鮮やかに浮かび上がってくる。

    自称詩人と同棲する女
    その滑稽さを現実が次第に侵食していくなかで、
    社会的なセーフティネットやモラルにまで話が至り、
    でも、その先には、それらでは満ちることのない
    遍てきな女性の内心が削ぎ出され舞台に漂う。

    その女性と、
    隣り合ってデモの始まりを待つもう一人の女性。
    それぞれのライフスタイルは違うけれど、
    そこには共通する領域が生まれ、
    でもそれは、デモ本来のベクトルとは
    異なる肌触りを持ったもので・・・。

    あからさまに一つずつの物語のテーマを
    しっかりと伝える力が舞台にはあって、
    でも、描かれるのは、そのテーマの内側にありながら
    テーマとどこか乖離した現実であったり空気感であったりする。

    そこに、本当の意味での現実を見据えそぎ出す
    作り手の力をしっかりと感じることができました。

    社会派というレッテルをもらうことが多い作り手ですが、
    そこには社会の枠ではなく、
    その中の人を描き出す力があって。
    重なった作品から浮かび上がってくる作り手のスタンスや
    質感をとても豊かに感じたことでした。



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    2012/08/03 17:36

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