『(諸事情により)よろず相談始めました。人間科学隙間研究所』~お陰さまで全日程終了致しました。次回作も御期待下さい。 公演情報 劇団夢現舎「『(諸事情により)よろず相談始めました。人間科学隙間研究所』~お陰さまで全日程終了致しました。次回作も御期待下さい。」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    二度観チケット
    二度観チケットとは、チケット1枚で1度観てもよし、2度観てもよしという
    観客へのサービス精神と己に鞭打つサディスティックな試練に満ちた取り組みだ。
    この日、私は2度目だが他のお客さんの多くは1度目だろう。
    そのどちらも満足させる舞台をどう作るのか、楽しみに出かけた。

    ネタバレBOX

    「2度目のお客様に差し上げております」と
    受付で素朴なオリジナルプリントのエコバッグをいただいて中へ入る。
    このエコバッグ、“夏休みの提出物”っぽい柄なんだけど
    夢現舎らしさ満載で何だかかわいい。

    さて、舞台は中盤まで前回と同じだったが、
    相談者が来た辺りからちょっとずつ削ったりしてテンポ良く進む。
    そして「魔方陣」(エロイムエッサイムの魔法陣ではない)が出て来たあと、
    前回とは全く違った展開を見せた。
    何と大天教授(益田嘉晴)が客席へやって来たのだ、電卓を持って…。
    おっとそう来たかという展開に笑ってしまった。

    研究所の職員は皆大天教授を尊敬していたのに
    次第に教授の過去が明らかになり、彼の“逃げ”の人生も明らかになる。
    でも「あの時のあんたのひとことで俺の人生は狂ってしまった」
    「私を救ってくれるのはあなたしかいないんです」
    な~んて言われてもねぇ教授、困りますわな。
    他人の人生にそこまで責任を求められる、生きにくい世の中であり、
    “思いこみ”と“他力”に頼って生きる人が多くなったということか。
    その結果ストーカーや通り魔事件、宗教がらみの事件などが増えたのかもしれない。

    しかし大天教授は「知らねーよ、そんなもん!」とは言わず、彼らの前から姿を消した。
    テレビで引っ張りだこの有名人だったのに
    どこかで責任を感じ、自分を責めて、社会の隙間に逃げ込んだのだ。
    いい加減な人のようで、実は一番誠実な小市民は彼ではなかったか。
    その彼を救ったのはただ一つ「まあ、いいか」という言葉だったのだ。
    誰も言ってくれないから、自分で言うしかなかったのだ。

    役者陣は皆熱演だが、振れ幅の大きさ、自在さと言う点では
    大天教授(益田嘉晴)が群を抜いている。
    どんどん顔色が悪くなっている研究員溝口(高橋正樹)の
    糸電話による告白シーンはとても面白かった。
    夢現舎はこの二人によって色が決まる感じ。
    その意味で以前の「ああ、自殺生活」の濃密な空間に最もそれが色濃く出ていたと思う。

    「人間科学隙間研究所」…それは大天教授が唯一逃げ込める小さな空間だった。
    あの変な狭いところから“貞子”のように這い出て来る、その奥の空間が
    教授の平穏を保つただひとつの場所だったのである。

    研究所を閉鎖し所員もバラバラになって、彼らはこのあとどうなるのか。
    次なる隙間を求め「諸事情」を抱えて、それぞれの人生を探しに別れ別れになっていった。
    きっとまた新たな隙間を見つけて、自分の居場所を確保するものと私は信じている。
    ああ大天教授よ、どこへ行く・・・。


    追伸
    これまで3回のロンドン公演、エディンバラ演劇祭全期間出場を自力で敢行した夢現舎が
    次はフランス公演を目指して参加者(俳優・制作・スタッフ等)を募っている。
    すごい!自力で海外公演?!
    この”無謀なる”企てに参加したい人、どうぞ応募してください!
    私は何もお役に立てないが、あとでDVDなど観たいと思います。
    (人間が小さくてすいません…)


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    2012/07/16 11:59

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