ウイルス 公演情報 大駱駝艦「ウイルス」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    69歳のキツネ
    私はダンスをよく知らないし、ほとんど観たことがない。
    友人に勧められてようやく今回大駱駝艦を初体験したのだが、
    漠然とイメージしていたよりはるかに洗練されていて、かつ
    麿赤児のしなやかさが強烈に印象に残る舞台だった。

    ネタバレBOX

    私が日頃観に行く舞台とは少し客層が違う。
    「ダンスやってる」系の若い人や、「アートが仕事」なおじさん風が多い。
    歴史あるカンパニーだからだろうか、ファン年齢層の幅広さに驚く。

    蜘蛛の巣のような太いネットが舞台いっぱいに張り巡らされ大勢の人がうずくまっている。
    やがて音楽に合わせて彼らの身体が震えはじめる。
    震えるだけで腹筋が鍛えられそうなほど長く続くその動きに
    スポーツのような肉体の鍛錬を感じる。

    次に男性が大きなワニの人形を持って踊っているうちに早くも少し飽きてしまった。
    ダンスを観るポイントを知らないからどこを見ればよいのか判らない。
    勢い、リズムとか動きの斬新さ・美しさを期待してしまうからなのだろう。

    舞踏は、静止している時の身体がそのクオリティを表わす気がする。
    鍛えられていなければ、長い時間同じ姿勢を保つことなど出来ないだろうし、
    しかもそれが美しく緊張感を保持しているところがすごい。

    麿赤児がキツネに扮して踊った時が、私的には一番盛り上がった。
    くるくる変わる表情、顔ではなく身体全体で表す表情が豊かで楽しい。
    ためらったり疑ったり、決心したり思い切って進んだり、という変化が鮮やか。
    キツネは、何を言っているのか判らない言葉をもにょもにょ言って
    そのたびに会場から笑いが起こる。
    音としか聞き取れない中に、感情が見え隠れしてひどくおかしいのだ。
    69歳の肉体が観賞に堪えるというだけでも感動する。

    大向うから歌舞伎のようなかけ声が飛んだ時にはびっくりした。
    年季の入った渋い声で
    「麿!」
    とやるのは、よほどの古参ファンだろう。

    舞踏を見慣れない者としては、公演時間がもう少しコンパクトで
    ソロと群舞が交互にあったりしたら、間延びしなくて楽しいのになと思う。
    ファンは少しでも長く観ていたいのかもしれないが・・・。

    最後の挨拶で、全員が御大を中心に楕円形を作り
    その密度と厚みを崩さずにゆっくりと舞台前方へにじり寄ってきたとき
    改めて大駱駝艦の凄さを感じた。
    個々のメンバーの完成度と全体としてのバランスが集約されている感じ。
    そしてやはり、顔といい動きといい、麿赤児さんが強烈な存在感を示した公演だった。

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    2012/07/09 01:09

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