ナカフラ演劇展 公演情報 中野成樹+フランケンズ「ナカフラ演劇展」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    とにかくおもしろい
    一週間がかりでサポートアクトを含めた全演目を拝見。

    豊かなバリエーションを感じる一方で、この劇団ならではの描き方のクリアさや半歩踏み出した遊び心、そして肌に伝わってくるようなビビッドさを感じ続けて。

    どの作品も漏れなく堪能いたしました。
    しかも、そこに完成形を観るのではなく、
    さらなる伸びシロへの期待が生まれてくるのが凄いなぁと舌を巻きました。

    ネタバレBOX

    *プログラム[A]

    「スピードの中味」

    ダブルキャストのA1/A2バージョンがあって、A1は7日19時30分、A2は15日15時の回を観劇。

    A1を観た時には、特に前半、
    物語を追いかけてひたすら見入る。
    会社などの会議風に味付けされた場面ごとの言葉や小道具、
    さらには含蓄のある台詞に惹きつけられて
    舞台が現わそうとするもの自然に追いかけて。
    で、終盤に組み上がったものが
    人が生きることの感覚に繋がり視野がすっと開けると
    振り返って描かれていたことの一つずつに
    しっかりと意味が生まれ面白い。
    観終わって、べたな言い方ですが、
    もう少し、舞台に織り込まれたものに
    早く気付けばとちょっと自分に対して残念だったりも。

    A2は内容を知ってみているので、
    それぞれのシーンに込められたニュアンスを
    一歩踏み込んで受け取ることができたように思います。
    そうすると、作品への視座が少し変わって、
    物語の仕組みの面白さにとどまらない
    登場人物それぞれの個性のようなものが
    奥行きをもって伝わってきて。
    A1の時に終盤振り返って気がついたおもしろさが
    さらなる新鮮な踏み込みをもってやってくる。

    ダブルキャストの部分の役者さんの個性も
    かなり違って見えて面白かった。
    A1ではクッキリとエッジを作って演じられたものが
    A2では表層のフォーカスを柔らかくして演じられて。
    刹那の印象はA1の方が強いのですが、
    A2には観る側に戯曲の仕組みに紐づいた
    ロールの深さのようなものも生まれていて。
    それは、役者さんの演じ方に加えて、
    観る側の物語への理解度が影響している部分も
    あるように思うのですが、
    どちらが良いということではなく、
    それぞれの色から舞台に
    別の質感がやってくることにも惹かれてしまいました。

    この作品、いつかもう一度観れば、
    さらに異なる見え方がやってくるのではともおもったり・・・。


    *プログラム[B]

    17日16時の回を観劇

    「マキシマム・オーバードライブ」

    タイトルコールなどもあからさまで小洒落ていて、
    その冒頭のくすぐりから
    笑いがわかりやすいというか、
    ベタでまっすぐな仕掛けが笑いを導いていく。
    でも、役者たちがひとつずつの台詞から間までを
    クリアにくっきりと編み上げているから
    それぞれの場がべたついたり
    あいまいでもわっとした膨らみにならず、
    きちんとエッジをもった物語として組みあがってくるのです。

    今様なアレンジや差込みも作品を研ぐ
    秀逸なスパイスとなって
    とてもシンプルに物語の骨格が観る側をまっすぐに楽しませる、
    落ちも鮮やか・・・。

    終わってみれば、理屈抜きに
    わかりやすくて面白かったです。
    よく作り込まれたものを
    とてもシンプルに堪能することができました。


    「サマーキャンプ」

    こちらの作品も、「マキシマム・・」とは別のニュアンスで
    トーンがよくコントロールされていて。

    舞台に物語る実直なテンションがあるから、
    観る側はそのままにことの成り行きを追ってしまう。
    物語の展開を予想させる伏線の張り方も良い具合で、
    厚みはないのですが、
    でも場の積み重なりに観る側を繋ぐニュアンスは
    しっかりと埋め込まれていて・・・。

    だから、山小屋での夢のなかで、
    妹の薬を何とかするためにツアーに参加した
    男が病に倒れる展開も違和感なく受け取れたし、
    何の衒いもなく
    夢と同じ展開が現出しても、作品が描くものを
    濃く上書きしているくらいのイメージしかなかった。

    そこまで着々と観る側を、
    恣意的に作られた作品の平板さに閉じ込めておいて
    返す踵の鮮やかなこと。
    周りの付和雷同ぶりもおかしくて、
    でもその先に、兄妹の関係をはじめとする
    さまざまな価値観がおりなす人生の綾や
    生きるということの価値の質感が浮かんできて、
    じわっと深く捉えられたことでした。


    *プログラム[C]

    11日19時30分の回を観劇

    「ズー・ヴァリエーション」

    印象として、派手さなどはないのだけれど
    お洒落なのですよ。
    フランスの軽くて、
    でも発酵バターがベースでしっかりと聞いている
    特に高級菓子というわけでもない
    ラング・ド・シャの食感を楽しむような・・・。

    リーディングの態で
    戯曲の仕組みから物語の骨組みが真直ぐに抽出されていて、
    その仕掛けの面白さに惹かれるのですが、
    でも、観ていて、より心を持っていかれるのは
    その骨組に肉付けされた
    キャラクターたちそれぞれの雰囲気だったりする。

    じゃあ、骨組みが登場人物の色に隠れてしまうかといえば、
    そんなことはなくて、
    さらに面白いと思うのは
    やっぱりキャラクターたちの雰囲気の先にある
    物語だったりするのです。

    それはとても不思議な感覚で、
    舞台に置かれた面白さの
    二つの要素が互いに互いを映えさせて、
    その両方の重なりを楽しんでしまいました。


    「きいてごらんよ、雲雀の声を」

    場の空気に一様でないテンションが作られ
    役者達それぞれからやってくる雰囲気が
    少しずつ変化してゆっくりとあせることなく織り上げられて。

    必ずしも会話の内容を味わう劇というわけでもなく、
    むしろ会話に至るまでの空気にこそ強く捉われて。
    そして、そこがしっかりと満ちているから
    シーンごとにトーンを変化させ、
    異なる風貌を作り上げていく役者達の力量が、
    あからさまに、かつしなやかに伝わってくる。
    単に物語全体の中での変化にとどまらない
    シーンの内側の刹那ごとに解像度を育むような
    それぞれの台詞の質感の作り方の秀逸目を瞠る。

    特に妻を演じた女優が紡ぎだす空気には
    まわりにかもし出されたテンションや色に染っても塗りこめられない、
    さらなる内側の密度が作られていて。
    個々の役者のかもし出す場を
    彼女自体の揺らぎから浮かび上がるものを埋もれさせることなく、
    纏っていく。

    なんだろ、単純に物語を追うにとどまらない、
    舞台全体に強い吸引力をうむ
    さまざまなテイストの重なりに圧倒されて。
    その刹那ごとに惹きこまれ
    気が付けば舞台の空気に深く囚われてしまっておりました。

    ・おまけ「マクベスのあらすじ」

    さらっと始まる。
    気がつけば魔女がいるし、
    夫人の殺意も恐ろしいくらいにカジュアルに表現されて。
    ことのなり行きの軽いのなんの・・・。

    でもそこに、あのマクベスの骨格が
    結構しっかりと現れてくる。

    「なんだこれ」とか思いつつ、
    その物語の顛末に、嘘のようにわくわくしてしまう。

    結局、マクベクという戯曲のスピリットの抽出とその具象化に対する
    作り手の圧倒的な精度の高さがあるから成り立つ作品なのだろうし、
    これができるからこそ、
    今回の演劇展の他の作品も、不要な澱みや重さを持たず
    常にクリアさをもってやってくるのだと思う。

    わずか10分の掌編でありながら、
    作り手の研がれた刃先をしっかりと感じ
    ぞくっとしてしまいました。

    *** ***

    ちなみにA1/A2にはサポートアクトがありました。
    主宰が教鞭をとる短大の生徒や卒業生の作品とのしたが、
    それぞれに
    表現に対する自由さや丁寧さ、
    さらにそれらを裏打ちする真摯さを感じることができました。

    ・coucou(クク) 「こないだのレシート」

    レシートから引き出される時間や生活の質感がやってくる。
    表現に観る側が委ねうる安定感があって、
    舞台に置かれていく感覚や揺らぎもビビッドに伝わってくる。

    ただ、表現の綺麗さに流れてしまうというか
    そのうちに丸められてしまったようなものがあるようにも思えて、
    もう少しラフで危なっかしさがあってもよいから
    そこからさらに解けるものを観たいようにも感じました。

    ・カシマシ 「タイトル未定」

    バレエのメソッドでの表現がしっかりと安定していて、
    だからこそ二人の身体から溢れだしてくるものを
    そのままに受け取ることができて。
    さらに、随所に、躍動感も感じる。

    表現に澱みがなく、
    心の刹那の表情にも思える表現が、
    様々に気持ち良く伝わってくる。
    描かれた時間に作品が閉じこもってループするのではなく、
    さらに外側への広がりもあって、
    目を惹かれました。

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    2012/06/23 11:19

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