満足度★★★★★
見事、平成新歌舞伎の誕生
いえ、これは、黙阿弥の原作があるそうですから、厳密に言えば、新歌舞伎とは言えないかもしれません。
江戸時代以降、上演されていないそうで、さすがに、大正14年生まれの、最後の歌舞伎劇評家だった父も、これは観ていません。
家に、先日まであった黙阿弥全集も処分してしまって…。
だから、どこからどこまでが、クドカンさんの創作なのか、全く不明ですが、
野田歌舞伎や、三谷歌舞伎に比べて、この演目は、しっかりと、歌舞伎の基本を押えた、真っ当な純歌舞伎だったと思います。
36年前に他界した父にも、見せてあげたかった名舞台でした。
白井さん、真那胡さん、近藤公園さん等、畑の違う役者さん達も好演され、すっかり、歌舞伎役者さんの中に溶け込んでいて、感心しました。
黙阿弥の原作の良さを活かしながら、脚本も、演出も、現代仕様にしている、手際の良さが、鮮やかな印象でした。
大詰めの切なさと美しさは、コクーン歌舞伎の初演の「三人吉三」に次ぐ名場面でした。
歌舞伎ののんべんだらりとした殺陣も、現代調に、スピードがあり、昔からのご贔屓筋には眉をしかめられるかもしれませんが、私は、歌舞伎は、昔も今も庶民の娯楽であってほしいと念じているので、今風に、自然な変換があるのは、肯定したいと思います。