星がるキミは雲の下 公演情報 ppoi-っぽい-「星がるキミは雲の下」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    なるほど・・
    わりと行く前からここでの評価の低さを気にしていていたのだけれど・・
    自分の目で見る限りは、正直、その低さの理由が良く分からなかった・・。

    設定のリアリティとか、プロットの複雑さとか・・・
    そういった類のものを重視する芝居読みには・・
    「イマイチ」な感じになるのかもしれないけれど・・
    自分は、まぁ、そういった感じでもなく、
    舞台の中で何か光るものがあればそれで十分というか・・。

    確かに、「斬新」と言えるほど目新しい何かに挑戦しているわけではないのだけれど、
    ラスト20分くらいでそれまで積み上げてきたものが
    つぎつぎと新しく姿を現してくる感じはなかなかに魅力的だな、と思ったり。

    自分が何よりもこの舞台が素敵だな、と思うのは・・
    主人公がとても無気力なようで
    実は夢見がちの青年であるということ。

    こういう設定、ありそうで実は舞台ではなかなか見かけない。

    自分もまぁ考えてみれば、
    踊ってる時と仕事をしてるとき以外はけっこう
    「眠くて死にそう」
    と顔に書いてあるタイプなので(苦笑
    こういうぼんやりとした主人公というのは共感できる気がして好みだ(笑

    上はキャラクターのハナシだけれど、
    次に物語のなかで自分なりに見所っぽく感じたところを書いてみます・・(以下、ネタバレへ・・

    ネタバレBOX

    物語の定番?として、
    無気力な主人公たちの十年ちょい後くらいの行く末を暗示するような
    オッサンが登場します。

    このムサくて自分よりずっと年下の雇用主の息子にダメだしばかりされてる男。
    ラスト直前で、神隠しにでもあったみたいに
    「男が全て同じに見える女の子」とすっといなくなってしまう。
    そのくだりなのだが、
    30年間曇り空が続く窓辺に「テルテル坊主をネックレスにひっかけてつるす」という
    希望なのか絶望なのか?
    新しい門出なのか心中なのか?
    はっきり説明がないだけにどうとでも取れるさじ加減の微妙さが
    自分は逆にとても好きだ。
    (ちょっと考えてみれば分かるのだけれど、
    この曇空が永久に続く世界でテルテル坊主は無用の長物だ。
    深読みすれば、このテルテル坊主がオッサン=首をくくる
    とも取れるし、逆に晴れを信じて飛び出したともとれる

    ちなみにこの物語は、
    30年間曇りが続く(雨も雪も晴れも無い)世界で
    無気力な若者たちが雲の上の星や夕日を夢見る物語なのだが、
    その設定も最初は非現実的で
    受け付けなかったのだけれど(苦笑
    見ているうちに、
    生まれたときから空に掛かった雲で
    星空や夕焼雲を奪われた若者たちが、
    目をつぶって感じることで
    心に空を取り戻す物語だと気づいた。

    ・・考えてみれば、この星空が見えないというのは
    現実に曇空が続いているのではなくて、
    空が見えない心の病気なのかもしれない。

    そう受け取れなくもないフリも最初にちょっとだけあった。

    これは、星空が観れない病気にかかった人びとが、星空を取り戻すまでを描いているのだと言えるかもしれない。

    「星空を観れない病」は現実的ではないかもしれないが、
    考えてみれば、
    大昔、フランスの作家(ボリス・ヴィアン)は、
    ヒロインの胸のなかに睡蓮の花が咲く病気を描いていた(自分もとても好きな小説だ(笑

    自分は、現実的でなくても、
    詩的な病なら劇中に登場して良いと思う。

    ・・・もし星空が見れない病気にかかってしまったら・・?

    想像するだけで恐ろしい話だが(苦笑
    考えてみれば、i霧に覆われたバルト海のロシアの詩人たちが
    幻想と言う名の想像力の翼を持ちえたことを思えば、
    本当に悲しいのは、想像力を失うことだと気づく。

    この物語はシンプルなようでいて
    人間にとって大事に思えることを描こうとしているので
    自分はけっこう好きです・・。

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    2012/06/18 00:45

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