汚れた世界 公演情報 無頼組合「汚れた世界」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    青春直滑降
    新宿のシアターミラクルはぎっしりの人で、補助椅子目いっぱい出しての公演となった。
    ハスに構えた劇団名とは裏腹に、青春の疑問符が対象に向かって
    直滑降で疾走する舞台だった。
    テーマや緊張気味の舞台挨拶に、この劇団の純粋な姿勢が表れていて好感度大。

    ネタバレBOX

    黒一色の壁に赤いラインが不規則に走る。
    黒い椅子が2つあるだけのシンプルな舞台。

    地球上の資源が枯渇する中、偶然アフリカで新エネルギー資源が発見される。
    それまで民族紛争に悩むその国を見て見ぬふりしていた大国は
    一転してその資源目当てに軍隊を送りこんで来る。
    「人道主義」を掲げて、この国も徴兵制度を復活させ戦争は拡大の様相を見せている。

    そんな中赤紙を受け取った、殺され専門の自称三流役者グン(滝澤信)は
    「NOと言わないこと」に疑問を感じ、異議を唱えて徴兵を拒否、
    刑事、高級娼婦、テロリスト集団、公安を巻き込んでの逃走劇が始まる。

    バイクや車での追跡シーンが、無対象ながら迫力があった。
    間違えればコントになりかねない場面だが、緊張感があってとても面白かった。

    上の方で意志決定されることに疑問を抱かず、抱いてもあきらめて何も言わない
    東電も原発も消費税も、戦争だってきっとこんな風に始まるのだろう。
    飼いならされた私たちに「それでいいのか、オレは死んでも嫌だ!」と叫ぶグン。
    あまりにストレートな青春疑問符疾走雄叫びロードムービーが
    やけに新鮮なのは今の時代と重なるからか、自分と重なるからか。

    自身の無理解から妻を死なせてしまった刑事クガを演じる酒井秀人さんの台詞に
    深い理解と味わいがあって、この人の他の芝居も観てみたいと思った。

    テロリスト集団アシタバのメンバー、ムロイ役の
    筏“ジャック”道彦さん(不思議な名前だ)、大阪弁の飄々としたキャラがユニーク。
    テロリストに絶妙なリアリティを与える“潜伏感”があった。

    女性陣の台詞がまだ“台詞台詞”していて“言葉”になりきれていないのが惜しい。
    必要悪の秘密クラブ(?)の女主人マリア(芝山えり子)とアテナ(堀江麗奈)の
    身勝手な理屈が狂気と化しているあたり、面白いキャラでとても頑張っているが
    公演後半でもう1ステージ上がったら素晴らしいと思う。

    グン役の滝澤信さん、グンの持ち前の素直さ・明るさが
    未来を断ち切られようとした時を境に怒りに変わるところが良かった。
    途中短いダンスシーンに目を見張るものがあって“踊る人なのか”と感心した。
    青臭いほど直球なストーリーを引っ張るのはこの人の雄弁な表情が大きい。

    一人ひとりのモノローグに説明を頼り過ぎている感じもあるが
    場面の切り替えがスピーディーに運ぶのはこのスタイルの効用かもしれない。

    グン、殺され専門の三流役者なんてとんでもない。
    あの死に方、一流だったぜ!

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    2012/06/17 10:05

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