GO HOME 公演情報 サスペンデッズ「GO HOME」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    曼荼羅のような死生観
    舞台美術の美しさとスケールに圧倒される。
    BGMは終始川のせせらぎだけ。
    舞台美術に魅せられ、川を遡るような構成に魅せられた2時間。
    私は川のほとりで鮭たちの一生を見た。

    ネタバレBOX

    冒頭、長い沈黙から始まった和博(佐藤銀銀平)と真澄(橘麦)の別れ話。
    その重苦しい雰囲気から、少しずつ時間は遡って
    私たちはその沈黙の意味と重みを知ることになる。

    彼らの駆け落ちの理由、高校生の頃、さらに小学生の時の出会い。
    二人を取り巻く友人たちの死や
    父親の暴力、そして一途な片思いなど様々なエピソードが
    ひとつの川へと流れ込む。

    このストーリーの中で、大事な人はみんな川で死ぬ。
    まるで鮭が卵を産んで死ぬために故郷の川へ帰って来るようだ。
    だが人が鮭と決定的に違うのは、「理不尽な人生に対する怒り」を持っていることだ。
    そのやり場のない怒りを抱えた人々が痛切に描かれていて胸が痛む。

    佐藤銀平さん、屈託のないランドセルの小学生が本当に似合う。
    運動神経の良い人らしい軽やかな動きとテンションがヘビーな話の救いになっている。
    後の鬱々とした人生とのギャップが鮮やかで素晴らしい。

    真澄をずっと一途に思い続ける純な孝造を演じた間瀬英正さん、
    ナイーブでひたむきなキャラクターがはまって
    断られたけれど、今後彼女の支えになるのは彼だろうと思わせるものがある。

    舞台手前に深く口を開けた川へ、芳江(新田めぐみ)が飛び込んだ時
    思わず「あっ!」と声を上げそうになるほどの衝撃があった。
    何とすごい舞台美術だろう。
    地下と舞台と、上手から下手にかかる一段高い通路、
    そして正面さらに高いところには死者に会えるという噂の深い森がある。
    その上客席を見下ろす通路と、吉祥寺シアターの空間をフルに使っている。
    輪廻とか死後の世界を感じさせるスケールは、まるで曼荼羅を見るようだ。

    一人の役者が親と子と、何役も演じるので複雑に感じるが、作者の問いかけは直球だ。
    その素朴な力強さが、繊細な精神世界を超えた自然の摂理を強く意識させる。
    誰かが死んでも、残された人間は生きて行くのだ、死ぬまで…。
    それはランドセルの和博がくり返す言葉そのものだ。

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    2012/06/16 04:54

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