「4 1/2」 「キッチンドライブ」 公演情報 劇団子供鉅人「「4 1/2」 「キッチンドライブ」」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    アイデアとガジェット溢れる豊かな世界
     大阪の若き雄・子供鉅人の『キッチンドライブ』は、フレッシュなパワーと、築100年の古民家ポコペンという時空間的スペックとが融合して素晴らしく面白い舞台になっていた。同居するある貧しい男女の気持ちのすれ違い。その、色を失ってしまった寂しい世界に、愉快な乱入者たちが現れ、世界を豊かで華々しいものに変えていく。これは、一種の魔法ですね。日常がいかようにも変幻自在であることを証明した。個体として生まれた以上は原理的に孤独でしかありえない人間の、しかし「どう生きてもいいのだ!」という自由を感じさせてくれた。
     左右の2つの部屋で展開される同時多発会話も、近しいはずの部屋同士の「遠さ」を感じさせる演出として効いていた。他にも、モールス信号、ラザニア、クリオネ、チープなフランス映画、ごま油の匂い、ロールキャベツ、シャンパンとワンカップ酒、両開きの冷蔵庫、押し入れ(笑)、電子レンジの音……様々なアイデアとガジェットが『キッチンドライブ』の世界を豊かなものにしている。築100年のポコペンは床が抜けそうなボロい家屋で、役者が歩くたびに軋む。階段を駆け上っていくシーンは底が抜けるのではないかと思った(それはあの家の長い歴史を感じさせた)。
     何より、リリー役の益山寛司の身体能力の高さは類を見ない傑出ぶり。あのバイセクシャル感はちょっと真似できるものではない。また乱入者たちに共感した女(キキ花香)の表情がパッと明るくなるのも、この物語世界の渇きと潤いとを表現していて良かった。
     開演前にはドリンクのサービスがあり、友達の家にお邪魔しているようなアットホームな雰囲気をつくりあげていた。寒い夜に観たので、ブランケットの貸し出しなどのサポートも有り難い。芝居の最中、あんまり面白くてつい手を叩いて笑ってしまった場面があったけれども、それもこのアットホームな雰囲気があったからこそだと思う。例えばもしデートで観に行ったら、帰り道のご飯がいつもより美味しくなりそう。
     今回は築100年の長屋という特殊な場所での上演だけれども、次回作『バーニングスキン』(再演。2012年6月末@原宿VACANT)はもう少し広い場所になるし、わたしは大阪の芸術創造館で観たけど、もっと幻想的なイメージの世界がひろがっていた。秋にはなぜかチャンバラ劇もやるらしい……(笑)。とにかくまだまだ底が見えない人たちだなと思います。

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    2012/06/10 17:46

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