翔べ翔べ翔べ!!!!!バナ学シェイクスピア輪姦学校(仮仮仮) 公演情報 バナナ学園純情乙女組「翔べ翔べ翔べ!!!!!バナ学シェイクスピア輪姦学校(仮仮仮)」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    感覚を閉ざさせてしまうもの
     シェイクスピアの各作品のカットアップに加え、なぜか『三人姉妹』や『ゴドーを待ちながら』(どこでやってたの?)をミックスさせた混成軍が、例によって水やワカメを投げつけてカオティックな世界を顕現させる。過去に観たバナナ学園の中でいちばん水に濡れました。油断した……。まあでもそれは笑い話になるわけです。
     わたしがバナナ学園の良さだと思っているのは、完全に複製物や偽物まみれになってしまった現代における、その、もはやイミテーションでしかありえない身体の絶望を、オリジナルへの懐古や回帰によって埋めるのではなく、むしろ過剰に複製/模倣していくことによって死屍累々を築きながらも乗り越えていこうとするその無謀さである。殉死、殉死、それも大量の殉死……。それが感動を呼び起こす。
     しかし今回は、確かにディズニーランド的な楽しさはあったけども、やや狂騒的なアトラクションの方向に傾きすぎた印象も。そして今ひとつ「圧」が足りなかったと感じるのは、方向性が明瞭ではなかったせいでは? 二階堂瞳子自身、あるいは参加する役者たちは、自分たちの狂騒ぶりをどのように考えているのだろうか? 今回は、舞台上で役者が観客にセクシャルハラスメントを仕掛けるという事件が発生したらしい。わたしは性犯罪というものを心底憎んでいるし、被害者がそれを告発することが相当な勇気を要するであろうこともできるだけ理解したいと思って日々を生きているけれども、この事件をもってバナナ学園の(過去作品も含めた)全てを否定しようとは思わない。ただ6月10日現在、その行為が演出家の指示もしくは容認だったのか、役者個人の暴走によるものだったのかは明らかにされておらず、二階堂瞳子自身の肉声(?)が聞けてないことも含めて、正直ちょっとモヤモヤした気持ちは残る。なぜそこに誰も歯止めをかけられなかったのか、と組織の在り方にこれ以上不安を抱かせないためにも、できうるかぎりの事実は明るみに出したうえでの再出発を図ったほうが、今後バナナ学園に関わっていくかもしれない人たちも、気持ちに整理がつくのではないかしら。
     劇場は、観客の価値観が揺らぐような場所であってほしい。その意味においては「危険」だし、決して「安心・安全」な場所ではないとわたしは思っています。しかし肉体的な危険性はできうるかぎり排除してほしいし(できれば俳優たちにとっても)、その責任が主宰者側にはあると思う。バナナ学園が水やワカメを飛ばすのは、それが服を濡らすことはあっても、観客の身体を傷つけるものではないからだと思っていた。とにかくこれを機に自分たちがやりたいことの原点を見つめ直して、また元気に暴れ回ってほしいと思います。あとは当人たちの判断だと思うので、現時点でわたしから言えることは以上です。
     ちなみに今回、わたしは上記のような行為を直接は目撃していないのですが、そもそも舞台で何が起きているのか、感じられる時間が少なかったように思う。レインコートを過剰に気にして防御的になり、感覚をひらいていくことが難しかった。できうるかぎりそうしようと努力したのですが……。
     役者では、「菊池」の名札を胸に貼り付けたブルマー姿の浅川千絵の勇姿を久々にバナナ学園で見たけれども、やっぱり水を得た魚というか、群を抜いた存在感を発揮していた。今回は謎の黒人(!)とのコンビネーション……。七味まゆ味の『三人姉妹』演説はさすがの存在感。中林舞のダンスもこのカオスの中にあって異彩を放っていた。ただ全体的に群舞がモヤッしていた印象もあり、相対的に、個々のプレイの持ち味も100%は活きなかったような。
     最大のネックとも思えるのは、せっかくシェイクスピアを使ったわけだけれども、セリフやシーンを聞かせるのか、聞かせないのかもどっちつかずだった感じ。うまくいけばシェイクスピアを成仏させることさえもできた気もするんだけど……。

    0

    2012/06/10 17:35

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大