夢!サイケデリック!! 公演情報 範宙遊泳「夢!サイケデリック!!」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★

    自由すぎた夢
     そもそも自由で無軌道すぎる「夢」を演劇でそれをどう統御するのか、あるいは逆にどう爆発させるのか。そこに今回の山本卓卓の挑戦があったんだろうし、誰が主体なのか不明瞭なまま物語を展開させていく語り口には、今後さらに掘り進めるだけの可能性もあるでしょう。しかしながら想像力が飛翔するタイミングを見失い、そのまま終わってしまった感じ。特に彼らの持ち味である遊び感覚が、今回は幼稚としか見えなかったのが残念。ヒロインである熊川ふみが頑張ってはいたものの、彼女の性別を消失・超越したような感じは、本来であればもっとこの「夢」の設定にハマれたはずなのになあと思ってしまう。他の役者さんたちもみな好きなのですが……。
     範宙遊泳の良さのひとつは、世の中のブラックな部分をユーモラスなやり方で舞台に引きずり出すところだとわたしは思う。決して綺麗でもなく、美しくもないもの、時としてどうしようもなくダメダメなものを、なんだか愛らしいと思わせてしまう。今作はその愛嬌が鳴りをひそめた。アトリエ春風舎の狭い空間であるにも関わらず、そしてわりと騒いでいるにも関わらず、終始どこかスカスカした感じがしたのはなぜだろう?
     山本卓卓は毎回手を変え品を変えいろんなことをやっていて、それはそれで素晴らしいアイデアの宝庫だと思うのだが、やはり長い物語を書いて上演するには、それ相応の筋力が必要だと思う。単発のアイデアを連射しても付かないような筋力が。長い物語では、うねうねしたグルーヴが生まれないとただのブツ切れの集積になってしまう。次回、再演となる『東京アメリカ』(2012年7月@こまばアゴラ劇場)はこれまで観た範宙遊泳の中で最も好きだった作品。彼らならではのグルーヴをぜひ見せて暴れてほしいなと思っています。

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    2012/06/10 17:09

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