満足度★★★
「死」を思う。
「どうして殺しちゃいけないの」。
現代の倫理観では論じることさえ憚られるテーマについて深めていく時間でした。死後の世界なんかない、この現世が全て…という突き放しも良かったと思います。
寺十吾さんの地底人ポール役、飄々とした物言いに笑わされ、核心を突いたセリフにドキリとさせられましたが、ご自身で演出されて舞台に上っているのだと思うとちょっと反則かな。
ラスト、家族で食卓を囲むシーンで、もりもりとご飯を口へ運ぶ食べっぷりに、清濁併せのむ人間の逞しさが眩しいほどに感じられ、私も明るい現実世界へ戻ってこられたように思います。「死」を思うことは「生」を考えることなのだと感じる舞台でした。
あと私が観賞した日は、現実の世界では死刑囚の刑が執行されたことがニュースになった日で、偶然とはいえ重く心に刻まれる日となりました。