満足度★★★★
やわらかさに惹きこまれる
観る者にしとしとと「滲んでくる」演劇というか。
比較的エグイ表現が好きな自分としては趣味ではないものの、それでも十分に楽しめる、上質な舞台。
美しい舞台美術であったり、劇場に入るなり線香の香りに包まれる心憎さであったり、空間演出が素晴らしい。
「昔々、未来のむかし」に始まる、寓話的で宇宙的な広がりを、あからさまでなくさりげなく展開していくストーリーテリング。
さまざまな方面から高い評価を受けているのも納得です。
残念だなあと思ったのは、舞台に登場するキャラクター以外に存在するであろう「島」の住人の影があまり感じられなかった点。
昔話的な語りを目指すにしても、リアリズムによる演出をするのであれば、もう少しそのコミュニティの在り様が見えてくる、そんな脚本だとよかったのになあとは思いました。
役者の芝居も、声色の巧みさ、所作の美しさなど、一人ひとり魅力的ではあったものの、時系列入れ替えを多用した作品の演技としては、キャラクターの年齢による演じ分けがもっとほしいなあ、と。
印象的だったのは吉田小夏さんのホスピタリティ溢れる前説。
某劇団(?)の醜聞にトゲトゲしていた心を癒された。