オーシャンズ・カジノ 公演情報 北京蝶々「オーシャンズ・カジノ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    エンターテインメントに徹した姿勢に乾杯!
     船上のカジノを舞台にさまざまな社会問題を提起しつつ、堂々と娯楽に徹した賑やかで楽しい現代劇でした。カジノのラウンジでありながら、マストのある船の形もしっかり表現した舞台美術が見事です。美術、照明、音楽などのスタッフワークのコンビネーションをはじめ、ダンスやステージングも凝っており、華美なパーティーやカジノの熱い勝負をとことん派手に見せる演出が素晴らしかったです。

     劇場ロビーにバー・カウンターをしつらえ、天井の照明にカラフルなセロファン(舞台照明用ゼラ?)を入れて、観客が席につく前の空間からムードづくりをしていました。日によってはカジノ・ナイトというイベントも開催し、作品だけでなく演劇公演全体をエンターテインメントとして演出する試みがいいですね。テーマパークのアトラクションのように気軽に楽しめる上質の小劇場演劇って、実は少ないと思うのです。あとは役者さんの演技のレベルが全体的に上がってくれれば…と思いました。

    ネタバレBOX

     日本の領海を出て合法的に開催される船上カジノ・パーティーでは、主催者と招待客、そして侵入者のさまざまな思惑が渦めき合っていました。財政難に陥っている長崎県の県議マダラメ(ザンヨウコ)は、中国人企業家ヤン(鬼頭真也)にのせられてカジノで勝負をして、こっぴどく負けてしまいます。ヤンは日本進出を狙う海外カジノ業者で、日本のカジノ合法化の機会を狙っていたのです。
     起死回生をもくろみ船に乗った若者トビオ(堀越涼)と、トビオのギャンブル狂いを治そうと必死になっている恋人アンコ(帯金ゆかり)は、ふるさとの長崎にカジノが上陸するのを防ぐため、ヤンに戦いを挑みます。その裏では、日本のパチンコ業界からの刺客と、違法とばく取り締まり専門の警察官もひそかに船に乗り込んでおり、物語の顛末には巧いどんでん返しが用意されていました。

     社会問題を複数の切り口から描き、違う立場の人間の思いも盛り込んだ、よくまとまった戯曲だと思いました。でも上辺をサラリと説明するに留まっているようにも感じました。演技のせいなのか演出のせいなのか、はたまた戯曲のせいなのかは私にはわからないのですが、もっと濃くて複雑な一瞬々々を積み重ねて欲しいと思いました。

     地面のレベルから3階まで表現できる、高さのある舞台美術でした。左右両側にある階段を上ったり下りたり、役者さんが頻繁にぐるぐると走り回るので躍動感があります。舞台前面中央のカジノテーブルは、使われない時は舞台奥へとスライドしてカーテンの裏側にしまわれる仕組みになっていました。カジノテーブルがカーテンから出てくると、役者さんは2階部分からジャンプして飛び降りて、テーブルに着きます。それだけでハっと目を引く見どころでした。
     照明のオペレーションと役者さんの演技とを合わせる演出で魅せてくださいました。トランプのカードを取る、めくって見る、テーブルに置くといった一挙手一投足に合わせて、照明が鮮やかに変化します。息を合わせた気持ちのいい効果が出ていました。きっかけが多くて大変だったことと思います。
     パチスロのドラムが回って止まるのを、チャイナドレスの女性らの屈伸で表現したのも面白かったですね。

     初日に拝見したせいか、役者さんの演技のおぼつかなさがずっと気にかかりました。もっと笑えるはずなんでしょうね。
     ザンヨウコさんはさすがの安定感。立ってるだけで役柄のバックグラウンドをはっきり表現されていました。鬼頭真也さんはピタリと決める堂々とした演技で存在感が大きかったです。堀越涼さんは中盤まで堀越さんだと気づかなかったほど、うだつのあがらない若者の役作りを丁寧にされていたと思います。ただ、ヤンとトビオのポーカー対決では、間(ま)を長く取り過ぎていたようにも感じました。帯金ゆかりさんがオープニングで見せてくださった腹筋が美しかった!

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    2012/05/26 21:39

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