THE BEE Japanese Version 公演情報 NODA・MAP「THE BEE Japanese Version」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    メビウスの輪になった暴力
    公式サイトによると、2006年にイギリス、翌2007年に日本でそれぞれ
    初演された作品の再演作品との事です。

    しかし、5年の歳月を全く感じさせないほど生々しい会話の応酬は、
    この作品が既にある程度の普遍性を持ってしまっているのか、
    それとも5年間の間、社会の方が何も変わるところが無かったのか
    判断に迷うところです。

    ネタバレBOX

    筒井康隆円熟期(と個人的には思っています)の作品、「毟りあい」を
    下敷きに書かれた作品なので、マイルドな演出が施されているとは
    いえ、筒井の攻撃的かつ不条理な作品展開、ひいていうなら個性が
    全面に出されています。

    最初、被害者であったはずの、何の変哲もないごく普通の男が
    ある時を境にして加害者に変貌する。この時、男の妻子を人質に
    とっている、加害者であるはずの脱獄囚は被害者になったわけで
    この構造が興味深く感じられました。

    そして、最初は、それぞれ人質に向けられていた、徐々に加速度を
    増す暴力の応酬が、やがてメビウスの輪の如く、暴力をふるう側の
    自分自身に向かってきている、皮肉だけど恐ろしい帰結。

    徐々に聞こえ始め、暗転では舞台上を覆い尽くさんばかりに
    大きくなる蜂の羽音は、男が徐々に正常さを失っていく、その
    境目で鳴らされる警告音であり、もしかしたら狂気へのいざない
    であったのかもしれません。

    「今度は…俺の小指を送ってやるよ…」

    既に、目的が何であったのかすら消え失せてしまい、自己破滅的な
    暴力を日課のようにふるうしかできない、異常性に一瞬身震いしました。

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    2012/05/21 06:46

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