満足度★★★★★
匂い(「キッチンドライブ」)
劇場では味わえない臨場感。
キッチンにただようご飯の湯気だとか、ガスの火の熱さだとか、人の住まう生活の匂いに浸って眺めていると、他人の(恋人同士の)生活を覗き見しているようなイケない気分にさせられます。
もう向き合うことすらできない恋人同士の家に次々と現れる珍客たちは、ちょっとどこかダメで、一生懸命で、とても愛らしい。
深夜のバカ騒ぎの後に訪れる突然の静けさがリアルで、淋しくて、やっぱり何も変わっていないどうしようもない現実を突きつけてきます。私の人生にもきっとあった、誰の人生にもきっとあった、空しい夜明け。
お芝居が終わって外へ一歩出たときに、私も一歩踏み出せたような気持ちになったのは、築100年を超える長屋のパワーかしら。