天使たち 公演情報 リュカ. (Lucas [lyka])「天使たち」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    構成の豊かさ、シーンの密度
    芝居の構成がとてもしたたかで、
    外枠からすっと内側の世界に取り込まれて。

    その世界の違和感のなさが、
    物語の顛末をダイレクトに観る側に
    流し込んでいく・・・。

    人と天使、それぞれの物語に加えて、
    「天使」の存在自体も
    心に残る作品でした。

    ネタバレBOX

    開演の少し前から
    舞台には役者現れ、外側の世界が形作られて。

    やがて、その場所にドアベルが響き
    来訪者が現れて舞台が始まります。
    どうやら自宅(か仕事場)に訪れた編集者と小説家の
    風景らしい。
    ちょっとコミカルでわちゃわちゃした感じに
    観る側も自然に取り込まれて・・・。
    で、そこでやり取りされる原稿に描かれた、
    とても自然にコアの物語へと導かれる。

    その場所に新しい住人がやってくるという冒頭、
    観る側に、しなやかに物語の前提が開示されていきます。
    オーナーである「おばさん」が醸す雰囲気の
    登場人物と重なりが
    小説を読む態をその場の実存感に塗り替えて。
    編集者が小説を読む態が外側に置かれているから、
    天使の存在、天使たちの世界も
    ごく当たり前にその場にあることを許し
    観る側を惹きつけていく。

    小説家、カメラマン、バイクレーサー、
    それぞれのキャラクターが次第にくっきりとした
    色を発し始める・。
    人間を演じる役者たちのお芝居からは、
    キャラクターの想いのナチュラルな質感が
    精度と密度を持ったお芝居から
    よどむことなく伝わってきます。
    そして、その姿に呼応するように、
    天使たちの様々な想いや揺らぎが
    幾重にも場に満ちていく。
    やがて、 天使たちそれぞれの姿が、
    天使自体の存在への俯瞰となって、
    観る側を彼らの世界に浸して・・。
    想いがあふれやがて人へと堕ちた天使、
    誰に宿ろうがずっと迷い続けている天使、
    夢をかなえさせようと一歩を踏み出してしまう天使、
    さらには、
    人の夢の終息に、やがて消えて行く天使・・・。
    役者達の演技が強くしなやかなテンションを舞台に重ねるなか、
    人の歩みの奥にある、
    ステレオタイプではない天使たちそれぞれの姿に、
    そして才能と夢をより合わせていく中での天使の存在感に
    次第に心を奪われていくのです。

    物語の展開にも工夫があって。
    シーンを支える見栄えの美しさ、
    小説のコンテンツであることが時に物語を隠し、
    あるいは外側の世界からの語りの態で
    物語を運ぶ。

    役者達もそれぞれのシーンをとても大切に描き出していて。
    良質な小説に何度も読み返すシーンがあるがごとく、
    印象に強く残るシーンがいくつもあって。

    ラストシーンに描かれた、
    物語の外側の人間たちの不器用さに心を解かれながら、
    単に物語の顛末を追うだけではない
    さまざまな印象たちに心満ちたことでした。

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    2012/05/10 18:38

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