満足度★★★★
ほさか版『銀河鉄道の夜』
原作からカンパネルラとジョバンニの友情に焦点を当て、「ほさか版銀河鉄道の夜」を創り上げた。
シュールレアリスム絵画を思わせる舞台美術が作品テーマをくっきりと表現しているのが秀逸。
物語が始まる前からワクワクした。
人間の深層心理や登場人物の二重構造など、ほさかよう氏の作劇の特徴はいつもどおり生かされている。
「銀河鉄道の夜」は、単なる空想ではなく、ずべて憲治自身が実際に体験したことでは?というほさか氏の読み解き方がすぐれた形で劇に表れていると思う。
いつも思うのだが、「銀河鉄道の夜」は原作が未定稿ということもあり、複雑で、いまだに解釈が定まらない部分もあり、まったく物語を知らない人には、劇も理解しにくい。
だから、ある程度物語を知ったうえで、観劇すると、このほさか版の優れた点もより深く理解できると思う。
今回観て、さらに原作への関心が深まった。本作ももう一度観てみたいと思う秀作。再演を希望する。
ひとつ難点を挙げるとしたら、2時間10分は少々長すぎると思った。正直、疲労感が残った。
私は、観客の集中力の観点からも、休憩なしの小劇場演劇は長くても1時間45分までにおさめたほうが良いという持論があり、優れた作者なら、なおさらそれが可能だと思っている。
学園生活とリンクさせる手法も「遠ざかるネバーランド」と共通しているが、今後、新境地を開くかどうか、作者の才能に期待したい。