深海のカンパネルラ 公演情報 空想組曲「深海のカンパネルラ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    ほさか版『銀河鉄道の夜』
    原作からカンパネルラとジョバンニの友情に焦点を当て、「ほさか版銀河鉄道の夜」を創り上げた。

    シュールレアリスム絵画を思わせる舞台美術が作品テーマをくっきりと表現しているのが秀逸。

    物語が始まる前からワクワクした。

    人間の深層心理や登場人物の二重構造など、ほさかよう氏の作劇の特徴はいつもどおり生かされている。

    「銀河鉄道の夜」は、単なる空想ではなく、ずべて憲治自身が実際に体験したことでは?というほさか氏の読み解き方がすぐれた形で劇に表れていると思う。

    いつも思うのだが、「銀河鉄道の夜」は原作が未定稿ということもあり、複雑で、いまだに解釈が定まらない部分もあり、まったく物語を知らない人には、劇も理解しにくい。

    だから、ある程度物語を知ったうえで、観劇すると、このほさか版の優れた点もより深く理解できると思う。

    今回観て、さらに原作への関心が深まった。本作ももう一度観てみたいと思う秀作。再演を希望する。

    ひとつ難点を挙げるとしたら、2時間10分は少々長すぎると思った。正直、疲労感が残った。

    私は、観客の集中力の観点からも、休憩なしの小劇場演劇は長くても1時間45分までにおさめたほうが良いという持論があり、優れた作者なら、なおさらそれが可能だと思っている。

    学園生活とリンクさせる手法も「遠ざかるネバーランド」と共通しているが、今後、新境地を開くかどうか、作者の才能に期待したい。

    ネタバレBOX

    歪んだ立方体のスケルトンの内と外で、物語が展開する。

    時空のゆがみをも表現した美術である。

    原作には化石の話が出てくるが、スケルトンの外には、過去の生活の記憶を象徴するようなチェストやテーブルが傾いて埋まっている

    照明でモノクロームの世界を表現した冒頭のシーンも素晴らしい。

    ジョバンニとカンパネルラの双生児性を主張する研究者も多いそうで、この劇の2人にもそれを強く感じる。

    星を愛する少年と海に憧れる少年。

    ジョバンニ=りく(多田直人)の白、カンパネルラ=けんじ(篤海)の黒の衣装、一見正反対のようで、背中合わせの似た者同士。

    大切な人を失った時、残されたものは、生死の悲しみの壁をどのように乗り越えていくのか。経験のある者には鋭く迫ってくる。


    寒色系のオーガンジーのモチーフをあしらった衣装や、ライトのつくマグカップで星座をつくる場面(マグカップには銀河鉄道おなじみのアイテム、牛乳が入っている)、視覚的にも楽しませる。

    小玉久仁子お約束のアニメチックで強烈な個性の魚座の女王(魚心先生)に拍手が沸いていた(笑)。

    牛水里美の二面性のある黒蜜星の乙女(黒上)はアングラ劇を得意とする劇団にいるだけあって美しい凄みを感じさせた。

    古川悦史演じるけんじ(カンパネルラ)の父(車掌)の述懐により、りく(ジョバンニ)はけんじの心の奥に入っていき、救いを得るのだが・・・。

    このへんの描写が観客の心に染み入るようであった。

    「りく」という名も空と海をつなぐ存在を表しているのだろうか。

    ザネリを救おうと溺死するカンパネルラは、自己犠牲の象徴と解釈されることが多いが、本作では、そのへんは強調されてはいない。

    足を痛めて泳げなくなりショックを受けていたカンパネルラがあえてとった行動の裏の心情のほうが胸に迫る。





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    2012/04/24 13:24

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